週1200件検索、調達実績は6件 行政の「SaaSカタログ」、費用対効果を検証へ

2026年09月02日 07:52

今回のニュースのポイント

デジタル庁の政策評価・行政事業レビュー有識者会議は、政府や自治体によるクラウドソフトウェア(SaaS)調達を支援する仕組み「デジタルマーケットプレイス(DMP)」について改善策をまとめました。DMPはSaaS製品や導入支援サービスをカタログ化し、行政機関が機能、価格、セキュリティ情報などを比較して調達できるようにする事業です。しかし、サイトでの検索実行数は週約1,200件に達する一方、本格開始から2025年度末までのDMP方式による調達実績は6件にとどまりました。有識者会議は運用費に見合う実績が出なければ事業継続自体を判断する明確なKPIが必要だと指摘し、デジタル庁は歳出削減効果などを盛り込んだ評価指標の策定に乗り出します。

本文
 デジタル庁が推進する「デジタルマーケットプレイス(DMP)」に対し、外部有識者による厳格な検証結果が示されました。政策評価・行政事業レビュー有識者会議がまとめた報告書では、利便性の向上と運用の費用対効果について多角的な課題と改善案が提示されています。

 従来の行政におけるIT調達では、システムを一から構築するケースが多く、仕様書の作成から調達完了までの手続きの煩雑さや期間の長さが課題とされてきました。DMPはこうした課題を解決するため、事業者が登録した既存のSaaS製品や導入支援サービスを「カタログサイト」の形で掲載し、政府や自治体が自らのニーズに合致するサービスを検索・選定・調達できるようにした仕組みです。

 ところが、有識者会議の公表資料によると、DMPサイト上での検索実行数は毎週約1,200件に上る一方で、本格的なサービス開始から2025年度末時点までのDMP調達方式を通じた調達実績は6件にとどまっていることが明らかになりました。有識者会議は、本格開始から約1年間という初期実績であることに留意しつつも「必ずしも多いとはいえない」と評価し、検索利用が必ずしも実際の調達へ結びついていない状況を指摘しています。

 これを受け、有識者会議は「調達実績と比較して相当程度の運用費がかかっている」と指摘しました。運用コストの削減に努めると同時に、今後も実績が十分に伸びない場合には「事業の継続自体に関して判断を行う必要もある」とし、事業の存廃判断にも使用できる具体的なKPI(重要業績評価指標)を設けるよう求めています。その際、単なる契約件数だけでなく、スクラッチ開発と比較してどれだけの歳出削減効果があるかについて、「いつまでに」「どの程度」達成するかを評価可能な指標とすることが要請されました。

 デジタル庁側もこれらの指摘を受け止め、対応を進めています。従来の調達件数目標に加え、スクラッチ開発との比較による歳出削減効果や調達期間短縮効果を踏まえた新たなKPIの設定を検討しています。また、達成時期と目標水準を明確化した評価指標を整備する方針です。

 検索数と調達件数のギャップについて、有識者会議は原因の分析も求めています。プロジェクト担当者がサイト上で有益なSaaSを見つけても、自治体内部の財務・会計部門においてSaaSやDMP調達方式への理解が得られず、自治体独自の会計ルールなどが障壁となっている可能性を推察として挙げ、ボトルネックの特定と解消を促しました。デジタル庁は自治体職員へのヒアリングやアンケートを実施し、現場のニーズや検索機能に関する意見収集を進めています。

 また、DMPでの検索条件の絞り込みが過度になされた場合、特定のサービスのみが抽出されて「事実上の随意契約」となる懸念も示されました。これに対しデジタル庁は、調達仕様チェックシートの設計などで不当な絞り込みを防止しつつ、引き続き調達の公正性を確保する方策を検討するとしています。

 なお、現在は事業者に利用料などの負担を求めていませんが、有識者会議は将来的に十分な調達実績が常態化した段階では、受益者負担の観点から事業者からの手数料徴収も検討すべきだと提言しました。デジタル庁は現時点では利用促進を優先しつつも、将来の利用実績や運用コストを踏まえて手数料のあり方を検討していく方針です。

 行政IT調達の迅速化と効率化を目指して導入されたDMPですが、本格運用の初期フェーズを経て、運用コストに見合う具体的な行政成果を示せるかが今後の大きな焦点となります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)