今回のニュースのポイント
デジタル庁がまとめた「情報システム調達におけるアジャイル開発やオープンソース化等に係る有識者検討会」の最終報告書(2026年3月公表)では、政府情報システムの調達をめぐる構造的課題と2026年度以降の施策の方向性が示されています。各府省庁や自治体が個別に開発してきたことで、同一・類似機能への重複投資や特定ベンダー・特定技術への過度な依存、組織内にノウハウが蓄積されにくいことなどが課題となってきました。同庁はオープンソースソフトウェア(OSS)の活用・管理を専門に担う「OSPO」の設置や、アジャイル開発の標準的なひな形整備、知見を持つ事業者を整理する「ベンダープール」の作成、専門組織「アジャイルCoE」の組成などを推進する方針です。2026年度にはアジャイル開発のパイロットプロジェクトを1件以上実施し、実効性を検証します。
本文
行政情報システムをめぐり、長年指摘されてきた「縦割りでの重複開発」や「特定ベンダーへの依存(ベンダーロックイン)」という構造課題に対し、調達の仕組みそのものを抜本的に見直す動きが進んでいます。デジタル庁は、2026年3月に取りまとめた「情報システム調達におけるアジャイル開発やオープンソース化等に係る有識者検討会」の最終報告書において、2026年度以降に向けたシステム調達改革の施策の方向性を明示しました。
報告書によると、従来の行政システムは、各府省庁や自治体が個別に開発・調達してきた経緯があります。その結果、①同一・類似機能の重複開発・重複投資、②機能・仕様の不統一による相互運用性の不足、③保守・運用の非効率、④特定ベンダーや特定技術への過度な依存による調達の公平性・柔軟性の低下――といった課題が指摘されてきました。
この課題に対し、同庁はオープンソースソフトウェア(OSS)の活用やソフトウェアのオープン化を単なる技術的選択にとどまらず、政府全体の調達基盤を転換する重要な手段と位置付けています。共通的に利用できるソフトウェアをオープン化して再利用を促すことで、開発効率の向上や仕様の標準化を図り、特定技術・事業者への過度な依存リスクを軽減する狙いがあります。
一方で、OSSの採用は管理が自己責任となり、ライセンス違反や脆弱性が法務・セキュリティ上の深刻なリスクにつながる側面もあります。このため同庁は、2026年度以降にライセンス方針、公開基準、セキュリティ要件などのルールやガイドラインを明確化する考えです。その管理の中核として、個別プロジェクトに依存せず全庁的なガバナンスを担う専門組織「OSPO(Open Source Program Office)」を庁内に設置する方向性を打ち出しました。OSPOを中心に、外部のOSSコミュニティや国際的なプロジェクトとの連携・協働も目指します。
もう一つの柱が、変化に柔軟に対応する「アジャイル開発」の環境整備です。従来の政府情報システムはウォーターフォール開発(工程順進行)を前提として予算要求や調達、監査を行ってきたため、短いサイクルで改善を重ねるアジャイル開発を採用する際、既存プロセスとの不整合から現場の負担が増大する問題がありました。
そこで同庁は、アジャイル開発の標準的なプロセスを確立するため、調達仕様書、準委任契約の契約書、予算要求資料、従来の要件定義書に当たるプロダクトバックログ資料などの「ひな形」を作成・整備する方針です。さらに、アジャイル開発の実績や知見を持つ事業者を整理した「ベンダープール」を庁内向けに作成・運用するほか、委託先ベンダー変更時でも開発を継続できるよう、プロダクトバックログ管理やソースコード管理、CI/CD、ドキュメント管理などを一体的に扱える開発環境を同庁側で整備・提供する取り組みを進めます。なお、ベンダープールの作成・運用に当たっては、特定事業者が調達上有利または不利にならないよう、公平性の確保に慎重を期すとしています。
行政特有の課題である「人事異動によるノウハウの散逸」への対策も盛り込まれました。担当者の異動によって知見が属人化し、「後続や他のプロジェクトで同様の課題に何度も直面する」状況を防ぐため、専門人材で構成する横断支援組織「アジャイルCoE」を組成します。CoEが相談対応やコーチング、ナレッジ蓄積を支援するほか、上位職、現場担当者、会計担当者の役割に応じた研修を行い、全庁的な人材育成を図ります。
本格的な展開に向け、デジタル庁は2026年度にアジャイル開発のパイロットプロジェクトを1件以上実施する計画です。作成したガイドブックやチェックリストの実効性を現場で検証し、得られた知見を継続的に反映させていく方針です。単なるシステム開発手法の変更を超えて、重複投資の削減や特定ベンダーへの過度な依存リスクの軽減、公平な調達環境の実現に向けた制度改革が試される段階に入ります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













