2030年度から教科書制度を刷新へ 「紙+デジタル」軸、生成AI搭載には慎重論

2026年09月03日 12:14

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2030年度以降を見据え、紙とデジタル双方の特性を生かした新たな教科書制度の検討が進む。小学校低・中学年では紙を中心とした学習環境への配慮も議論されている(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

文部科学省において、2030年度以降の「デジタルな形態を含む教科書」の導入を見据え、具体的な制度設計の検討が進められています。2025年9月の中央教育審議会デジタル教科書推進ワーキンググループによる審議まとめを受け、紙に限定されてきた従来の教科書の形態を見直し、デジタルな形態を含むことを可能とする制度改正が提言されました。教育委員会や学校長(採択権者)を対象とした意向調査では、望ましい教科書の形態として紙とデジタルを組み合わせた「ハイブリッド型」を選んだ割合が小学校で88.3%、中学校で86.3%、高校で78.4%に達しました。一方で、小学校低・中学年における紙中心の配慮や、動画・音声の検定基準、さらには生成AIの教科書本体への搭載を見送るべきとの意見など、デジタル化の範囲や線引きに関する議論が本格化しています。

本文
 文部科学省では、2030年度以降の「デジタルな形態を含む教科書」の導入を見据え、教科書の制度や検定のあり方を根本から再設計する具体的な検討が進められています。

 契機となったのは、2025年9月に中央教育審議会のデジタル教科書推進ワーキンググループが取りまとめた審議まとめです。同まとめでは、紙のみとされてきた教科書の法的・制度的定義を改め、デジタルな形態を含めることを可能にする制度改正が提言されました。単に「紙の教科書を端末上のデジタル版に一斉置き換えする」のではなく、紙、デジタル、そして両者を組み合わせた「ハイブリッド型」を含め、何をもって正式な「教科書(主たる教材)」と位置付けるかという枠組みそのものの見直しが進められています。

 制度改正に向け文科省が全国の教育委員会や公私立学校長など(採択権者)を対象に実施した意向調査によると、新たな制度のもとで望ましい教科書の形態として「ハイブリッド型」を選択した割合は、小学校で88.3%、中学校で86.3%、高等学校で78.4%と大半を占めました。これに対し「デジタルのみ」との回答は小学校で5.5%、中学校で7.1%、高校で4.7%にとどまり、「紙のみ」も小学校で6.1%、中学校で6.5%、高校で16.8%にとどまりました。

 ただし、ハイブリッド型を望む回答が多数を占める一方、その中身については低・中学年ほど紙の比重を高くする意向が強く示されています。指針検討会議の議論でも、認知処理能力が発達途上にある小学校低・中学年については「紙中心の学習環境」を前提としながら、補完的にデジタルを取り入れる方向性が示されています。意向調査の設問でも、小学校低学年の国語においてハイブリッド型を選んだ層の内訳は「ほぼ紙(42.7%)」「紙が多い(41.8%)」の合計が84.5%に達しており、低年齢層における手書きや長文読解など紙の役割を重視する見解が浮き彫りとなっています。

 検討資料では、紙の特性として「長文の読み込み」「複数ページの比較」「一覧・俯瞰」「手書きによる思考の深め」などが挙げられる一方、デジタルの特性として「動画やシミュレーションによる視覚的理解」「音声の活用」「成果物の共有・比較」などが提示されています。単なる媒体の選択ではなく、「どのような学習目的の際にどちらの形態を用いるか」へ議論の軸足が移っています。

 こうしたデジタル要素の取り込みに伴い、検定制度の再構築も課題となっています。現行の教科書では二次元コードを介した補助コンテンツが増加しており、学校現場での扱いやすさや発行者の負担感が指摘されてきました。今後は、正式な教科書として検定対象とするデジタルコンテンツと、その他の補助教材(副教材)を明確に切り分ける方針です。

 デジタルな形態が教科書に含まれる場合、動画、音声、シミュレーション、プログラミング等も検定審査の対象となります。これに対し、教科用図書検定調査審議会の各部会では、動画の定義や1本当たりの長さについて「3分程度が限界ではないか」とする意見や、全掲載量の枠組み、外国語音声の正確性や多様性の基準など、新たな審査観点が議論されています。一方で、画面の拡大・縮小やルビ表示、読み上げといった技術的機能については、記述内容そのものとは分けて確認にとどめる方向が検討されています。

 一般の関心が高い生成AI技術の扱いについては、教科用図書検定調査審議会や専門委員ヒアリングにおいて慎重論が相次ぎました。生成AIは回答内容に可変性があり正確性の担保が困難であることや、機能の更新スピードが急速である点を理由に、「現時点では教科書本体への搭載は見送ることが適切であり、教科書外の教材やツールとして活用すべき」との意見が示されています。

 さらに、デジタル化によって訂正手続きの迅速化が期待される一方、運用のルール作りも必要となります。デジタル部分についても紙と同様に訂正申請によって記述を更新することが適切との考えが示されており、頻繁な更新による現場の混乱を避ける観点から、長期休業期間中の更新やバージョン管理を求める意見も出ています。文科省の資料によると、2024年度の検定済み教科書における訂正申請は年間でおよそ3万箇所に上っており、誤記・誤植を減らすための教科書発行者による編集・校正体制の維持・確保も併せて求められています。

 2030年度以降の導入に向け、問われているのは「紙かデジタルか」の二者択一ではありません。何を正式な教科書とし、動画や音声をどう審査し、新技術との境界線をどこに引くのか。紙を前提としてきたこれまでの教科書のあり方そのものを再定義する取り組みが進んでいます。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)