特殊詐欺2108億円、対策も「国境・業界横断」へ SNS広告から送金まで、国際基盤で情報共有

2026年09月08日 07:42

サーバー侵入

オンライン詐欺が複数のサービスや業界をまたぐなか、企業・業界・国境を越えた情報共有による対策が始まっている(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

日本国内で特殊詐欺被害が拡大するなか、オンライン詐欺への対抗策が個別企業の防御から、業界や国境を越えた情報共有へとシフトし始めています。JETRO(日本貿易振興機構)の報道によると、企業や専門機関、関係省庁などが連携する「日本オンライン詐欺対策アライアンス(JASA)」が2026年8月26日に正式設立されました。さらに8月には、国際知的財産保護フォーラム(IIPPF)が持つ詐欺広告や誘導先サイトの兆候情報(シグナル)を、国際的な情報共有基盤「Global Signal Exchange(GSE)」上で共有するパイロットプログラムも始まっています。詐欺の手口がサービスや国境をまたぐ実態と、防御側の国際連携の最前線を追います。

本文
 オンライン空間を悪用した詐欺被害の拡大に伴い、防犯や被害抑止に向けたアプローチそのものが大きな転換期を迎えています。

 警察庁が発表した2026年1〜7月の特殊詐欺認知・検挙状況(暫定値)によると、全国の特殊詐欺認知件数は2万6051件(前年同期比16.6%増)、被害額は2108億1000万円(同42.9%増)に達しました。なかでも「SNS型投資詐欺」の被害額は881.2億円(同88.6%増)に上り、1件当たりの平均被害額も約1342万円(編集部計算)と高額化が際立っています。

 こうした日本の被害急増の背景として見逃せないのが、詐欺の「入口」となる接触手段の変化です。

 JETROが報じた「詐欺対策カンファレンス Japan 2026」(8月26日開催)での警察庁の発表によると、2025年通年のSNS型投資詐欺(認知件数9523件、被害額1288億円)において、被害者との当初の接触手段として最も高かったのが、SNSなどに表示される「広告」(約4割)でした。不審なアカウントからの直接のメッセージだけでなく、日常的に利用しているオンラインサービス上の広告が、詐欺プロセスへの最初の入口になっているケースが少なくありません。

 ここから浮かび上がるのが、現代のオンライン詐欺の構造的な特徴です。一般的なオンライン詐欺の構造として、SNSやWeb上の広告での「接触」から、外部のメッセージアプリや不審なWebサイトへの「誘導」、最終的な「決済・送金」へと進む模式的なプロセスが挙げられます。

 つまり、広告を表示する事業者、誘導先となる外部サービス、最終的な資金移動を扱う金融機関など、複数の事業者や業界をまたいで手口が進行します。詐欺グループが一連のサービスを横断して攻撃を組み立てているのに対し、防御側の情報が個社や単一の業界内に閉じられていれば、全体像をタイムリーに把握し被害を未然に防ぐことは極めて困難になります。

 こうした「詐欺の横断化」に対抗するため、対策側も境界を越えた情報共有に動き出しています。

 2026年8月26日に正式設立された「日本オンライン詐欺対策アライアンス(JASA)」は、企業、業界団体、専門機関、消費者団体、関係省庁などが連携し、情報共有や官民・国際連携を通じて被害抑止を目指す中立・非営利の協調プラットフォームです。

 さらに、国際的な枠組みでの実証も始まっています。JASAは8月、IIPPF(国際知的財産保護フォーラム)が提供する詐欺広告や誘導先詐欺サイトに関する兆候情報「シグナル」を、国際情報共有基盤GSE(Global Signal Exchange)上で共有し、被害の未然防止に向けた枠組みの構築を目指すパイロットプログラムを開始しました。IIPPFでは、本プログラムで得られる知見を基に、今後プラットフォーム事業者との連携を検討していく方針です。

 もっとも、現段階ではパイロットプログラムが始動したところであり、情報共有の仕組みが即座にすべての詐欺サイトを自動遮断したり、被害を根絶したりする段階に達しているわけではありません。また、カンファレンスでは生成AIの悪用による「なりすまし」や標的に合わせた詐欺コンテンツの大量展開など、手口のさらなる巧妙化も指摘されており、技術的な攻防は続いています。

 それでも、2026年7月単月でネットバンキング経由の振込被害額が103.7億円に達するなど、オンラインを介した資金移動が被害に利用されている現状において、入口の兆候情報を業界や国境を越えて共有する取り組みは、対策の単位を個社から経路全体へ広げる重要な一歩と言えます。

 詐欺の手段がサービスや国境を越えて高度化するなか、防ぎ手もまた企業・業界・国境の垣根を取り払って情報をつなぎ始めています。国内で被害額の急増が続く2026年、始動した国際情報共有の試みが、実際の未然防止や被害抑止にどのような実効性をもたらすのかが注視されます。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)