今回のニュースのポイント
日本銀行が10日公表した「デリバティブ取引に関する定例市場報告(日本分集計結果:2026年6月末)」によると、日本の主要金融機関による店頭(OTC)デリバティブ取引の想定元本残高は94.8兆ドルとなり、2025年12月末から1.3%増加しました。2024年6月末(70.4兆ドル)との比較では2年間で約34.7%増となります。ただし、この94.8兆ドルという数値は金融機関の「借金」や「損失可能性額」を示すものではありません。本統計はデリバティブ契約の計算基準となる「想定元本」を集計したものであり、報告対象金融機関相互の取引における二重計上が調整されていないなど、数字の性質を正確に解釈することが求められます。
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日本の主要金融機関が抱える金融派生商品(デリバティブ)の契約規模を示す最新データが明らかになりました。日本銀行が10日に公表した「デリバティブ取引に関する定例市場報告」の2026年6月末時点の集計結果によると、相対で取引される店頭(OTC)デリバティブの取引残高は、想定元本ベースで94.8兆ドルとなりました。
この残高の推移をたどると、2024年6月末の70.4兆ドルから、2024年12月末に78.8兆ドル(前期比11.8%増)、2025年6月末に85.6兆ドル(同8.7%増)、2025年12月末に93.6兆ドル(同9.3%増)と拡大を続け、今回の2026年6月末には94.8兆ドルに達しました。直近半年間(前期比)の伸び率は1.3%増にとどまっているものの、2年前の2024年6月末との比較では24.4兆ドル(約34.7%)の増加を記録しています。ただし、これはあくまで市場で取り交わされた契約の基準額が増加したことを示す統計であり、金融機関のリスク量が35%拡大したことを意味するものではありません。
94.8兆ドルに上るOTC取引残高の内部構造を見ると、全体の8割以上を「金利関連取引」が占めています。2026年6月末の金利関連取引は81.9兆ドルとなり、前期比0.1%減とほぼ横ばいで推移しました。一方、外国為替の変動リスク等に対応する「外為関連取引」は11.3兆ドルと前期比5.0%増加しました。また、企業の信用リスクを取引対象とする「クレジット・デリバティブ取引」は1.0兆ドルとなり、前期比68.9%増と高い伸びを示しています。ただし、クレジット・デリバティブはOTC全体の約1%の規模にとどまっており、80兆ドルを超える金利関連とは取引規模の桁が異なる点に留意が必要です。なお、日銀公表資料の中では、クレジット関連の残高が増加した具体的な背景要因については言及されていません。
OTC取引とは別に、「取引所取引」の残高についても集計が行われています。2026年6月末の取引所デリバティブ残高(想定元本)は4.5兆ドルとなり、前期比で12.9%増加しました。このうち金利関連取引が4.0兆ドル(同13.3%増)を占めています。OTCの94.8兆ドルと取引所取引の4.5兆ドルは異なる取引形態の統計区分であり、これらを単純合算して市場規模を提示することは適切ではありません。
今回の統計を読み解く上で最も重要なのが、「94.8兆ドル」という数字の意味合いです。一般的に「兆ドル」単位の巨大な数値を目にすると、「金融機関が94.8兆ドルもの負債や借金を抱えているのではないか」「巨額の損失が発生するリスクがあるのではないか」といった解釈がなされがちです。
しかし、本統計で示されている数値は、金利交換(スワップ)や通貨取引におけるキャッシュフローを計算するための基準となる金額である「想定元本(notional amount)」です。実際の取引において94.8兆ドルという現金が直接移動しているわけではなく、金融機関が被る最大の損失額を示すものでもありません。
また、集計方法の前提条件にも注意が必要です。今回の調査は、日本国内の主要デリバティブ・ディーラー16先(みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、りそな銀行、三菱UFJ信託銀行、みずほ信託銀行、三井住友信託銀行、SBI新生銀行、あおぞら銀行、ゆうちょ銀行、野村ホールディングス、大和証券、みずほ証券、三菱UFJ証券ホールディングス、信金中央金庫、農林中央金庫)の協力のもと、連結ベース・ドル建てで作成されています。
日銀は、今回の日本分集計では報告対象金融機関相互の取引について、二重計上を調整していないとしています。今後、国際決済銀行(BIS)が全世界のデータを集計して公表するグローバルベースの統計において、二重計上が調整される予定となっています。
したがって、94.8兆ドルという数値は「日本のデリバティブ市場全体の絶対的なリスク量」として捉えるのではなく、「主要ディーラーなどのデリバティブ取引残高を想定元本ベースで集計したもの」として客観的に位置付けることが求められます。今後は、追って公表されるBISのグローバル調整後統計を参照し、世界全体における取引量の変化や日本市場の位置づけを比較・確認していくことが分析の次の視点となります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













