米クアルコム、車載半導体売上高89%増 AIデータセンター事業50億ドル目標

2026年11月05日 07:53

今回のニュースのポイント

米クアルコムが発表した2026年度第4四半期決算は、全社売上高が前年同期比8%減の103億2,200万ドルとなりました。スマートフォン向けが26%減少した一方、車載向け半導体は前年同期比89%増の19億9,000万ドルと急伸しました。同社はアマゾンとAIデータセンター向け製品の複数世代にわたる協業を発表し、2027年度の同事業売上高目標50億ドルを維持しました。ウエハーや先端パッケージング等の製造コスト上昇への価格対応も進めています。

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 米半導体大手クアルコム(Qualcomm)は2026年11月4日、2026会計年度第4四半期(7~9月期)および通期決算を発表しました。第4四半期の全社売上高は、米国会計基準(GAAP)ベースで前年同期比8%減の103億2,200万米ドルとなり、非GAAPベースでも前年同期比7%減の104億4,200万米ドルにとどまりました。主力のスマートフォン向け半導体の売上高が減少し、全社売上高も前年同期を下回りました。一方、事業別では車載向け半導体の売上高が前年同期比89%増と大きく伸びました。同社は車載分野の拡大に加え、人工知能(AI)データセンター向け事業の育成を進めており、スマートフォン以外の事業を成長させる方針を示しています。

 半導体事業を担うQCTセグメントの第4四半期実績を見ますと、車載向け売上高は前年同期の10億5,300万米ドルから19億9,000万米ドルへと大幅に増加し、四半期ベースで約20億ドルの規模に達しました。一方で、これまで最大の収益源であったスマートフォン向け売上高は前年同期の69億6,100万米ドルから51億3,700万米ドルへと26%減少しました。IoT向け売上高は前年同期比4%増の18億8,800万米ドルと小幅な伸びにとどまり、車載とIoTの増収分を合わせてもスマートフォン向けの落ち込みを補い切れませんでした。その結果、QCT事業全体の第4四半期売上高は前年同期比8%減の90億1,500万米ドルとなり、事業構造の転換途上における減収要因が明確に表れています。

 スマートフォン市場の成熟を見据えるなか、クアルコムは成長戦略の中核としてAIデータセンター事業の拡大を本格化させています。同社は今回の決算発表で、米アマゾン(Amazon)とのAIデータセンター向け製品について、複数世代にわたる協業を発表したことを明らかにしました。自社の低消費電力・高性能計算技術をサーバー市場へ展開し、拡大するAIインフラ需要を取り込む方針です。経営陣は2027会計年度のデータセンター事業における売上高目標として50億米ドルを据え置く姿勢を再確認しました。さらに、2027年度には車載、IoT、データセンターからなる「非スマートフォン」分野の売上高が前年度比で60%超増加するとの見通しを示し、新たな収益基盤の確立に強い意欲を示しています。

 今後の収益性や半導体市場全体を見極めるうえで、供給網におけるコスト環境の動向も極めて重要な論点となっています。同社は公式発表資料のなかで、半導体業界全体においてウエハー製造や組み立て、検査、先端パッケージング、メモリー、各種部材に至る広範な投入コストの上昇に直面していることを指摘しました。クアルコムはこれらのコスト上昇に対応するため、製品価格への転嫁を進めています。この価格改定に伴う収益改善効果は、2027年度下半期のQCT事業の売上総利益率(粗利益率)に全面的に反映される見通しであると説明しています。半導体サプライチェーン全体のコスト上昇圧力が続くなか、価格交渉力と技術的付加価値の維持が収益管理の焦点となっています。

 2026会計年度通期の業績を振り返りますと、全社GAAP売上高は前年度比3%減の431億2,000万米ドル、非GAAP売上高は前年度比2%減の432億4,000万米ドルとなりました。一方、GAAP最終損益は136億2,800万米ドルの黒字となり、前年度の55億4,100万米ドルから146%増加しました。ただし、この最終利益の急増には、過去に計上していた評価性引当額の取り崩しに伴う57億米ドルの税効果が大きく寄与しており、本業の営業活動による利益拡大を示すものではありません。一方、非GAAP最終利益は前年度比15%減の113億1,100万米ドルとなりました。通期のスマートフォン向け売上高も13%減少しており、GAAP最終利益の増加だけでは事業収益の動向を捉えられない状況です。

 次期となる2027会計年度第1四半期の会社予想について、クアルコムは売上高を104億~112億米ドル、QCT売上高を90億~96億米ドル、希薄化後EPSをGAAPベースで1.03~1.23米ドル、非GAAPベースで2.15~2.35米ドルと提示しました。なお、同四半期からQCT売上高予想にはデータセンター事業の実績が含まれる予定です。車載半導体の急成長やアマゾンとの協業を足がかりとするAIインフラへの進出は、同社の事業ポートフォリオを多角化する大きな節目となります。日本の自動車メーカーや電子部品・材料メーカー、半導体製造装置産業にとっても、車載コンピューティングの高度化やデータセンター向け部材需要の行方は重要な監視対象であり、今後の動向が注視されます。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)