来週の展望 重要な指標、イベントが多く「春の嵐」も覚悟の新年度スタート
来週(4月1日~5日)は名実ともに新年度入り。東京市場は月曜日から金曜日まで5日間、取引があるが、ヨーロッパは1日は復活祭後の「イースターマンデー」で多くの市場が休場で、香港市場も休場になる。NY市場は開く。また、4日は中華圏の祝日「清明節」で、上海市場は4日、5日、香港市場は4日が休場になる。香港市場が開くのは2、3、5日、上海市場が開くのは1、2、3日の3日間のみ。イースターや清明節の休みが入るので、東京市場での海外投資家の動きはやや鈍りそうだ。
国内の経済指標は、まず1日の取引時間前に1~3月の日銀短観(業況判断DI)が発表される。アベノミクス立ち上がりの3ヵ月の総まとめ指標として注目を集めそうだ。その他に3月の大手百貨店売上速報も出る。2日は3月のマネタリーベース、2月の毎月勤労統計調査の現金給与総額、3月の自動車販売台数が発表される。大引け後にファーストリテイリング の3月の国内ユニクロ既存店売上高などの月次発表がある。3日と4日は日銀の金融政策決定会合が開催され、4日に政策金利が発表されて黒田総裁が記者会見をする。どんな金融緩和策が打ち出されるか、来週最大のハイライトだ。5日は2月の景気動向指数が発表され、国内景気は本当に回復しているのか確認できる。新学期商戦の3月の携帯電話契約件数の発表もある。
来週は2月期決算企業の決算発表が本格化する。しまむら が1日、セブン&アイHD が4日に発表を行う予定。どちらも小売業なので、アベノミクスの個人消費押し上げ効果や消費税引き上げ前の駆け込み需要を織り込んだ2014年2月期の業績見通しは見逃せない。
海外の経済指標は、1日に中国の3月の製造業購買担当者指数(PMI/物流購入連合会)、アメリカの3月のISM製造業景気指数と2月の建設支出が発表される。2日にはユーロ圏の3月の製造業購買担当者指数(PMI)と2月の失業率、アメリカの2月の製造業新規受注、3月の新車販売台数の発表がある。3日はユーロ圏の3月の消費者物価指数(HICP)概算値速報、アメリカの3月のADP雇用者数、3月のISM非製造業景気指数が出る予定。4日にはユーロ圏の3月の非製造業購買担当者指数(PMI)と2月の生産者物価指数(PPI)、ECB政策金利、イングランド銀行政策金利、アメリカの3月のチャレンジャー人員削減数が出る。4日はECB理事会が開催される日でもあり、終了後にドラギ総裁が記者会見を行う。利下げ観測も出ているECBの政策金利は据え置きなのかどうか要注目だ。5日はユーロ圏の2月の小売売上高、アメリカの3月の失業率と非農業部門雇用者数、2月の貿易収支、2月の消費者信用残高の発表がある。言うまでもなく来週で最も注目される指標は5日のアメリカの雇用統計で、NY市場はそれを意識しながら推移しそうだ。
このように来週は、日本の日銀短観、日銀金融政策決定会合、景気動向指数、ヨーロッパのECB理事会、アメリカの雇用統計と、毎日のように重要な経済指標の発表や中央銀行のイベントがある。それにキプロス情勢やイタリアの政局の成り行き、朝鮮半島情勢などがからんで、新年度のスタートは波乱含みでなかなか平穏とはいかない週になるだろう。とりわけ為替は敏感に反応しそうで、株式市場もそれに振り回されるかもしれない。
東京市場にとって最大のイベントになるのが3~4日に開催される日銀の金融政策決定会合で、甘利経済再生担当大臣も参加する意向を示している。3月中の臨時会合が噂されながら開かれなかっただけに、黒田新総裁のもとでの最初の会合への注目度はますます高まっている。いったい「質・量ともに大胆な異次元の金融緩和」とはどんなものなのか。下馬評では外債の購入や日銀当座預金の付利の引き下げよりも量的拡大を選ぶという予想が多く、どんなリスク資産をどれぐらい買うかで意見が分かれている。株式やリスクの高いローン債権の買い入れまで踏み込むという見方は少数派で、資産買入等基金の枠の拡大、買い入れ対象の国債の残存年限の3年から5年への延長、「日銀券ルール」の事実上撤廃あたりではないかというのが大方の推測。「2%のインフレ目標を達成するまではゼロ金利政策をやめません」という市場へのコミットメント(確約)を打ち出して、新総裁が「決意表明」をしてみせるというのも新体制の第1回目にふさわしいパフォーマンスだろう。もっとも、会合で決定したことよりもむしろ、総裁記者会見での一問一答の際のニュアンスで「今後に含みを持たせた」部分のほうが注目されるようになるかもしれない。
来週には需給面で気になる要素が一つある。それは「海外ヘッジファンドの決算対策売り」だ。その決算期は11月末と12月末が多く、中間期は5月末と6月末。海外ヘッジファンドには、顧客が解約を申し出る際は四半期末の45日前までに告知する「45日前告知ルール」というものがあり、その告知期限は今年の中間期で解約する場合は4月15日と5月13日になる。そのため4月の第1週、第2週あたりにその第1波、5月の連休明け頃にその第2波がくることになる。ヘッジファンドは解約告知を受けた時点から決算対策売りを始めるので、もし解約が多ければ日本に投資する海外ヘッジファンドの多くが利用する日経平均先物の仕掛け売りが多発して日経平均の下振れ要因になるだろう。事実、昨年の週足チャートを見ると4月2~6日の週に395円安、5月7~11日の週に427円安と大きく下げた長い陰線が刻まれていて、日経平均は1万円を超えていた3月下旬のピークから大きく崩されてしまった。1年前とは内外の状況が大きく違うとは言え、用心するに越したことはないだろう。
日経平均の前週の星取は2勝2敗。今週は3勝2敗だが29日は「ドレッシング買い年度末スペシャル」のおかげでプラスになったので実質上は2勝3敗と、波乱のせいで大きく伸びない週が2週続いた。来週も毎日のように国内外の重要指標やイベントが続いて為替レートの変動に振り回され、同じような週になる可能性が高いと思われる。1日の為替、株価のボラティリティ(変動幅)が大きい「春の嵐」のような日もあって、3月18日や28日のようにTOPIXの前引けのマイナス幅が1%を超えて、後場に市場にETF買い支えの実弾を撃ち込む「日銀砲」が炸裂する日もあるかもしれない。そうした波乱含みの状況を考え合わせると、来週の日経平均終値のレンジは12200~12700円とみる。(編集担当:寺尾淳)