決算で明暗が分かれたのが住友商事<8053>とベネッセHD<9783>。午後1時半の決算発表でマイナス圏から急浮上し8円高で終えた住友商事は今期の増収増益見通しが素直に好感された。一方、前日発表したベネッセは前期の営業利益が13%増で自社株買いも同時に発表しながら、今期の営業利益見通しがアナリスト予想より70億円低く6%の減益としたのを市場はよほどお気に召さなかったのか、東証終値は340円安で値下がり率1位になってしまった。業績期待が大きい銘柄ほど、今期見通しが市場予測を下回った時の失望売りのスケールが大きくなる。
売買高ランキングは、この日の終値なら「千円札2枚用意すれば買える株」ランド<8918>が9位に入り、演歌のコロムビア<6791>が13位に登場し値上がり率も15位。ここは終値なら5万4000円用意すれば買える。靴下のナイガイ<8013>も7万円で手に入る。そうした銘柄で、株式投資の初心者は今週3日間、しっかり練習できただろうか。
この日の主役は「iPS細胞関連銘柄」。日経新聞朝刊1面に「iPS細胞で創薬 京大・東大VB、止血剤18年にも量産」という記事が踊った。京大と東大の研究グループが設立したベンチャーがiPS細胞を利用した止血剤の生産技術を今年中に確立し、2015年に臨床試験を実施し2018年に市販品の量産を目指すという内容。世界初の創薬への応用例になるため、iPS細胞関連銘柄の代表格のタカラバイオ<4974>がストップ高の500円高、セルシード<7776>が355円高、コスモ・バイオ<3386>が127円高、J-TEC<7774>が16.69%上昇の10万円高でストップ高、プレシジョン・システム・サイエンス<7707>が9.47%上昇の18000円高と新興市場のバイオ関連銘柄は大引け間際にお祭り騒ぎを演じ、120円高の武田<4502>など東証1部の医薬品株にも飛び火した。マザーズ指数、ジャスダック指数は日経平均、TOPIXとは逆に上昇している。
アベノミクスの「成長戦略の一丁目一番地」と期待を集めているのは農業と医療で、京都大学の山中伸弥教授がノーベル賞を受賞した「iPS細胞」はその中でも最大の希望の星。創薬が成功すれば、特許を独占してライセンス供与やクロスライセンス契約で有利な立場に立つという欧米の医薬品企業が得意とする知財戦略もとれると期待されている。だが、メディカルが成長期待分野なのは欧米諸国も同様で、ファイザー、メルク、ノバルティス、ロシュ、サノフィ、グラクソ・スミスクラインのような世界的な医薬品企業のロビー活動は強力。各国政府に働きかけて日本包囲網が敷かれ、国際会議で「iPS細胞は特別で基本特許の独占になじまない」などと知財のルールに例外が設けられたりして日本企業の利益が押しつぶされる心配もある。安倍内閣にはそれをはね返す自信はあるのだろうか。(編集担当:寺尾淳)