インターネット上にラジオの音声を流すサイマル放送のサービスが開始されたのは2010年のことである。それまでラジオ音声のインターネット配信というのは放送局単位で行われてきたが、CMが流れなかったり、音楽が流れなかったりしているものもあった。何より音声がクリアーではなく、普通のラジオを聴いた方がいいというクオリティだった。しかし同年にスタートしたradiko(ラジコ)においては、基本的にすべての音声が流れるようになっている。
当初は、都市部などでビルの影などに隠れてラジオ放送が届きにくい場所に届けるという名目で始まったradikoであるが、その先のモデルにラジオ放送のインターネット配信というのものがあったことは確かだろう。ネットがあればラジオがなくてもラジオが聞けるようになる。その利便性が向上することによってリスナーを増やそうという目論見があったのだ。
ただ、radikoは難聴取エリア向けの放送という名目があったため、聴取地域に制限がかけられていた。東京ならば東京で放送されているラジオしか聴けないようになっていたのだ。しかし4月から月額350円を支払えば全国のラジオ放送を聴くことができるようになった。これにより、地方限定の番組などを、どの場所からでも聴くことができるようになった。現在、ラジオ放送の多くは番組の一部をインターネット上で後日公開するポッドキャストサービスを行っているが、今後はリアルタイムでポッドキャストサービスと同様の内容を受信することができるようになる。
かつてのアナログ放送の時代はループアンテナなどを設置して遠くのラジオ放送を受信する遠距離受信といった行為は一部のラジオマニアの間では知られていた。東京で関西のラジオを聴いたり、北海道で東京の電波を拾うといった行為が盛んに行われていたのである。デジタルの世界においても、radikoの有料サービスがスタートする前には、聴取制限を解除する非公式アプリも存在していたという。ラジオをめぐる文化というのは基本的には変わりのないものなのかもしれない。今後radikoがどのような進化をとげることになるのか。今から楽しみである。(編集担当:久保田雄城)