加齢や食習慣だけではない動脈硬化の新たな危険性

2014年04月20日 16:39

 動脈硬化症は、血管の内側にコレステロールなどの脂肪が蓄積することにより血液の流れが悪くなる病気である。心筋梗塞、狭心症などの心臓病や脳血管障害など重大な疾患に深く関わることが知られている。動脈硬化の進展には加齢や食習慣など様々な要因が関わることが知られているが、近年、細菌やウイルスの持続的な感染もその一つと考えられ、解明に注目が集まっている。

 東北大学大学院医学系研究科の赤池孝章教授らは15日、ヘリコバクター・シネディ(シネディ菌)という細菌の感染が血管細胞への脂肪蓄積を増加させることで、動脈硬化症の進展を促進することを明らかにしたと発表した。
 
 これまでどのような細菌やウイルスが、どのようにして動脈硬化を進展させるのか、そのメカニズムは明らかではなかった。赤池教授らは、以前より、ヒトの動脈硬化病巣にシネディ菌が感染していることを示唆する知見を得ていたが、今回、動脈硬化症のモデルマウスを用いて、シネディ菌が感染すると、血管への脂肪の蓄積が増加し、動脈硬化症の進展が早まることを世界に先駆けて証明した。

 さらに、培養したマクロファージ細胞を用いた実験において、シネディ菌が感染した細胞では、コレステロールを細胞内への取り込むタンパク質が増加し、コレステロールを細胞外へ排出するタンパク質が低下することにより、脂肪の蓄積が増加することを明らかにした。

 ヘリコバクター・シネディ(シネディ菌)は、1984 年に初めてヒトへの感染が明らかになった細菌。発熱、下痢などの比較的軽い症状を引き起こすことが知られていたが、感染経路や病原性については不明な点が多かった。最近、赤池教授らは、本菌感染の高感度な検出・診断法を開発し、健康なヒトにも同菌の保菌者がいることを確認している。

 今回の研究成果は動脈硬化の進展に関わる新しい病原体を発見しその分子機構を明らかにしたものであり、動脈硬化症の発症・進展のメカニズムの解明に関する画期的な成果であるという。今後、ヒトにおけるシネディ菌の感染と動脈硬化症の関連についてさらに詳細な研究を推進することにより、ヒト動脈硬化症の新しい予防法・治療法の開発と確立を目指す。(編集担当:慶尾六郎)