ベネッセの事件をはじめ様々な情報漏えい事件が発生している。このため、企業が保有する情報について、その管理に対する経済的・社会的関心が高まっている。また、ひとたび情報漏洩が起こった場合には、取引先や消費者からの信用を失い、企業価値を著しく毀損してしまう。さらに、政府は知財立国を目指すなか成長戦略で「営業秘密や知的財産の管理にかかる環境整備を 2014 年度中に行う」としており、政策における重要性も増している。
今回は、企業の1割が営業秘密について「漏洩の疑いあり」と考えていることが判明した。株式化した帝国データバンク(TDB)は、営業秘密に関する企業の見解について調査を実施し、11日にその結果を発表した。調査期間は 2014年8月18日~31日、調査対象は全国2万3533 社で、有効回答企業数は 1万1023 社(回答率 46.8%)だった。
それによると、企業の 8 割が営業秘密の漏洩について「重要」と認識営業秘密1の漏洩について、自社の見解としてどのように考えているか尋ねたところ、8 割超の企業が「重要である」と回答した(「非常に重要である」「やや重要である」の合計)。他方、「重要ではない」は 12.3%、「分からない」は 5.4%となった。「重要である」と回答した企業を規模別にみると、「大企業」が 87.6%だったのに対して、「小規模企業」は 74.3%で 13.3 ポイント下回った。また、「中小企業」も 80.7%となっており、企業規模が大きいほど営業秘密の漏洩を強く警戒している様子がうかがえる。
業界別にみると、営業秘密の漏洩に対する重要性を最も強く認識しているのは『金融』(89.5%)であった。次いで、『サービス』『製造』『卸売』が続き、最も割合が低い『農・林・水産』においても 7 割を超えている。営業秘密の漏洩に関する意識は、業界を問わず高水準であった。とりわけ、『金融』は、「非常に重要である」と考える企業だけで8割を超えており、二番目に高かった『サービス』(60.3%)を20ポイント以上上回るなど、その危機意識の強さが際立っている。
また、自社において、過去5年間での営業秘密の漏洩事例の有無を尋ねたところ、「漏洩事例はなかった」が 75.8%となり、8割近くの企業では営業秘密の漏洩はみられなかった。しかし、「漏洩事例があった」(1.7%)と「漏洩と疑われる事例があった」(7.8%)を合わせると 9.5%の企業で営業秘密漏洩の疑いのあることが明らかとなった。
漏洩があった(疑い含む)と回答した企業を規模別にみると、大企業は小規模企業に比べて割合が若干高くなっている。大企業は、守秘義務や社内教育、セキュリティーが充実している場合が多いものの、営業秘密は“人”の介在で漏洩することが多く、従業員や取引先の多い大企業で漏洩事例を経験する傾向が高くなっている。他方、小規模企業は人材や資金面などで漏洩対策が十分に実施できない状況にある場合も多い。
企業からは「営業社員の引き抜きにともない営業担当の得意先が一部流れた」(繊維・繊維製品・服飾品卸売)や「独立をすることが多い業界なので顧客はある程度流出する」(不動産)など、転職や独立を機に情報を持ち出されることで漏洩したという声が多く挙がったとしている。(編集担当:慶尾六郎)