今回のニュースのポイント
日本製鉄、JFEホールディングス、神戸製鋼所の直近決算では、国内市場を巡る厳しい事業環境が続くなか、主力事業の収益には明暗が分かれました。日本製鉄はU.S. Steelの連結が業績を押し上げたものの、在庫評価差などを除く実力ベースの事業利益は減少。JFEは鉄鋼事業が黒字転換した一方、神戸製鋼は鉄鋼アルミ事業が赤字となりました。厳しい国内市場を背景に、海外事業やエンジニアリング、素形材など鉄鋼以外も含めた収益源が各社の業績を支えています。
■ 鉄鋼大手3社、国内市場の逆風続く
日本製鉄、JFEホールディングス、神戸製鋼所の鉄鋼大手3社による2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)連結決算が出そろいました。国内鉄鋼市場に厳しさが残るなか、3社の主力事業の収益には違いが表れています。
連結業績を見ると、日本製鉄は米鉄鋼大手U.S. Steelの連結化により売上収益が前年同期比40.4%増の2兆8,211億円となり、最終損益も752億円の黒字へ転換しました。JFEホールディングスも親会社所有者帰属の四半期利益が前年同期比約4.4倍の312億円を計上。神戸製鋼所は四半期純利益こそ減益となったものの、通期の純利益予想を上方修正しました。しかし、連結数字の背景にある主力の鉄鋼事業に目を向けると、各社の収益状況には明確な差が生じています。
■ 日本製鉄、U.S. Steelが加わる一方「実力」は減益
日本製鉄の決算では、海外市場の取り込みが国内の逆風を補う構図となりました。売上収益の4割超に及ぶ大幅増にはU.S. Steelの連結化が大きく影響しており、利益面でもU.S. Steelが約320億円寄与したほか、在庫評価差等も前年同期比1,120億円改善しました。
しかし、同社が本業の稼ぐ力を示す指標として開示している在庫評価差などを除いた「実力ベース事業利益」は、前年同期比650億円減の1,084億円にとどまっています。U.S. Steelの加わった海外事業が全体を支える一方で、国内鋼材マージンの悪化や国内需要の低迷を背景に、既存の国内製鉄事業を取り巻く環境は引き続き厳しい状況にあることが示されています。
■ JFEは鉄鋼黒字転換、神戸製鋼は赤字 同じ市場でも明暗
国内鉄鋼市場に厳しさが残るなかでも、主力事業の損益には違いが表れました。
JFEホールディングスの主力である「鉄鋼事業」のセグメント利益は30億円となり、前年同期の121億円の赤字から黒字転換を果たしました。操業改善や棚卸資産評価差のプラス転換などが収益改善を支えました。なお、連結最終利益が約4.4倍となった要因には土地売却益150億円が含まれており、事業自体の回復と特殊要因を分けて見る必要があります。
対照的に、神戸製鋼所の「鉄鋼アルミ事業」は経常損益ベースで23億円の赤字へと転落し、前年同期の54億円の黒字から悪化しました。主力の鉄鋼アルミ事業が赤字となり、全体業績の重しとなっています。各社で開示指標や事業・製品構成などが異なるなか、足元の主力事業の収益動向には明暗が生じました。
■ 厳しい国内市場、海外・周辺事業が補う
こうした主力の素材需要の停滞に対し、各社を支えているのが鉄鋼事業以外の事業ポートフォリオや海外拠点です。
日本製鉄においては、買収したU.S. Steelを含む海外事業が利益を支えました。また、システムソリューション事業も95億円の事業利益を確保しています。
JFEホールディングスでは、鉄鋼事業の黒字化に加え「エンジニアリング事業」がセグメント利益89億円(前年同期比55.4%増)を達成し、「商社事業」も113億円の利益を計上しました。
神戸製鋼所でも、鉄鋼アルミ事業の赤字を他部門がカバーしました。「素形材事業」が経常利益81億円(前年同期は7,300万円)と拡大したほか、「機械事業」が62億円、「エンジニアリング事業」が60億円の経常利益を確保しています。
国内の鉄鋼事業だけでなく、海外展開やエンジニアリング、素形材など事業構造の違いが、各社の収益を支える要因となっています。
■ 通期予想は上方修正や据え置き、大幅悪化見込まず
通期業績の見通しにおいて、3社が大きく失速するシナリオは示されていません。ただし、その修正内容には違いが見られます。
日本製鉄は当期の進捗を踏まえ、通期の事業利益予想を従来見通しの5,300億円から6,300億円へ、親会社所有者帰属の当期利益予想も2,200億円から2,900億円へと上方修正しました。JFEホールディングスは売上収益予想を4兆8,000億円から4兆8,500億円へ上方修正した一方、各利益予想は従来見通しを据え置いています。神戸製鋼所も通期の親会社株主帰属純利益予想を1,000億円へと引き上げました。
国内市場の急速な回復を見込んでいるわけではないものの、海外事業や鉄鋼以外の事業も含め、通期ベースでの収益確保を目指す姿勢が見られます。
■ 異なる収益構造が今後の業績を左右
国内市場を巡る厳しい事業環境が続くなか、大手3社の決算からは、海外展開や事業の多角化によって国内の落ち込みを補う姿が浮かび上がります。今後は国内需要の動向に加え、日本製鉄におけるU.S. Steelとのシナジー、JFEにおける複数事業の安定成長、神戸製鋼における鉄鋼アルミ以外の収益力の継続など、各社が持つ異なる収益源をどこまで伸ばしていけるかが、今後の業績を左右する焦点となりそうです。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













