武田薬品、糖尿病治療薬の米訴訟で和解成立

2015年09月14日 07:32

 糖尿病治療薬「アクトス」に関するアメリカでの製造物責任訴訟について、製薬会社大手の武田薬品工業<4502>は12日、原告側との和解が成立する見通しになったとの発表を行った。2015年4月に公表された、本訴訟の解決に向けたプログラムへの原告の参加率が96%を超えたとのこと。原告の95%以上の受け入れが和解成立の条件となっていた。これにより、武田薬品工業は和解金23億7000万ドル(約2860億円)を支払う見通し。なお、解決に向けたプログラムへの原告の参加率が97%以上となれば、和解金は24億ドルにまで膨らむ。ただし、すでに武田薬品工業は15年3月期連結決算に訴訟関連費用などを含む引当金を計上しているため、今後の業績への影響はないとのこと。

 糖尿病治療薬「アクトス」は、1999年に武田薬品工業が発売した当時の主力薬で、累積売上高は3兆円以上となっている。10年にアメリカ食品医療薬品局が「アクトス」を長期服用することで、膀胱がんの危険性が高まる可能性があると発表し、11年以降、アメリカで集団訴訟などは相次いで起こった。当初は武田薬品工業も全面的に争う姿勢を示していたが、年数百億円とみられる訴訟負担や、企業イメージの悪化を防ぐために、その後、和解に踏み切る。これまでに規模の大きな複数の原告団とは和解していたが、今回の和解成立により「アクトス」をめぐる9件の訴訟のうち、7件で和解が成立することとなる。残り2件については、訴訟を継続する意向だ。

 なお、今回の和解成立の見通しを発表するに際して武田薬品工業は、「当社は和解を選択することを決定しましたが、当社のアクトスに対する考えに変わりはありません。当社は、米国および日本やその他の国々で糖尿病治療の選択肢として引き続きアクトスを提供いたします」とのコメントを発表するとともに、今後も、「優れた医薬品の創出を通じて人々の健康と医療の未来に貢献するという当社のミッションの実現に一層注力してまいります」としている。(編集担当:滝川幸平)