第四次産業革命とも呼ばれる産業界の大きな変革が進展している。この革命の中核となるのはもちろん企業のAI化であり、企業の様々な意志決定過程がIT化され、自動化されて行く。言わば企業戦略の機械化であり、そこでは新たな統制手法が必要となり、企業マネジメント全般のあり方に変化を生み出す。
先月下旬、ITベンダー系コンサルタントのSAS Instituteが米国、ヨーロッパ、アジアのビジネスリーダー305人を対象にフォーブス・インサイツが実施した調査結果をもとにAI統制に関するレポートを発表している。
調査結果によれば、1つもしくは複数の事業でAIを利用している企業は調査対象の72%にのぼった。このうち、「複数の業務で全面的にAIを導入している」企業は46%で、世界の主要企業の約半数で既にAIが運用されている。
AIを導入している企業のうち「AIの導入は間違いなく成功であった」と回答した企業は44%、予測や意思決定の精度向上、顧客の獲得率向上、生産性向上などが具体的成果として挙げられている。また、多くの企業がAI導入のメリットとして「従業員がより高度な業務に従事できること」を挙げており、AIの導入によって「従業員が単純作業ではなく、より戦略的な業務に集中できるようになった」と導入効果を実感している企業は62%と6割を越えている。
しかし、AIの全面的導入にはAIが「人間に対する偏見や不当な扱い」などを行うことによって顧客との信頼関係などに悪影響を生み出すリスクもある。AI導入計画をもつ企業のうち「AIによる意思決定が顧客との関係性に影響をおよぼす懸念がある」と感じている企業は60%にのぼる。
AIを運用する企業はAIの意志決定やアルゴリズムに関し顧客に対する説明責任がある。AIを導入している企業のうち倫理研修を実施している企業は70%、倫理委員会を設置している企業は63%となっている。自社のAI導入について「成功している」と答えた企業の74%が「AIが生み出した成果を最低でも週に1回評価して、注意深く監視している」と回答している一方、「効果なし」と答えた企業では33%となっており、AI導入後の統制、監視がAI導入「成功」を決定づけるカギのようだ。
AI化は意志決定の自動化、機械化とも言われる。しかし、AIを運用するのは人間であり、AIの意志決定アルゴリズムを常に透明化し、倫理的基準を明確にして統制していくことが不可欠である。レポートでは、この統制、監視プロセスの構築が全体として未だ不十分としている。(編集担当:久保田雄城)