電通・博報堂、国内事業がけん引 デジタル伸長も海外事業に課題

2026年08月15日 13:41

電通・博報堂

国内事業の好調と海外事業の課題が対照的となった電通グループと博報堂DYホールディングスの最新決算(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

広告大手2社の最新決算では、国内事業の堅調さが鮮明となりました。電通グループは2026年1~6月期の日本事業で売上総利益のオーガニック成長率が5.0%となり、調整後営業利益は上半期として過去最高を更新しました。博報堂DYホールディングスも2026年4~6月期の国内事業で新規顧客獲得や既存取引拡大、デジタルホールディングスの連結効果などを背景に営業増益を達成しました。 一方、海外では電通の米州(Americas)などでマイナス成長となり、博報堂DYも海外事業の営業赤字が拡大しました。国内の広告・マーケティング需要や周辺領域の成長を取り込む一方、北米をはじめとする海外事業での成長回帰や収益改善という共通の課題も浮かび上がっています。

本文
 国内広告大手の電通グループと博報堂DYホールディングスの最新決算が出そろいました。両社の決算を横断して分析すると、デジタル化や事業領域の拡張に支えられた「国内事業の好調さ」と、北米をはじめとする「海外事業における成長の課題」という、明確な対照構造が見えてきます。

■ 電通は営業黒字転換、博報堂DYは営業益19%増

 まず、両社の全体決算の概況です。

 電通グループの2026年12月期中間連結決算(2026年1~6月期・IFRS)は、売上高にあたる収益が前年同期比4.9%増の7,173億5,200万円、売上総利益が同3.7%増の5,830億6,800万円となりました。営業損益は前年同期の365億4,500万円の赤字から838億6,900万円の黒字へ、親会社の所有者に帰属する中間損益も前年同期の736億4,700万円の赤字から462億7,700万円の黒字へと大幅に黒字転換しました。

 ただし、この営業損益の急回復には第1四半期に計上した電通銀座ビルの譲渡益(固定資産除売却益296億3,400万円)や、前年同期に計上していた海外子会社ののれんに係る大規模減損損失(865億7,600万円)の剥落といった一時的要因が大きく影響しています。一連の特殊要因等を除いた本業の収益力を示す調整後営業利益は、前年同期比6.6%増の719億8,200万円となりました。

 一方、博報堂DYホールディングスの2027年3月期第1四半期連結決算(2026年4~6月期・日本基準)は、収益が前年同期比3.8%増の1,762億2,200万円、営業利益が同19.4%増の30億1,600万円、経常利益が同4.6%増の30億3,700万円となりました。親会社株主に帰属する四半期純損益は税金費用の影響等により17億6,000万円の赤字(前年同期は18億1,600万円の赤字)となったものの、赤字幅は縮小しています。

 (※電通グループは12月期企業の中間期、博報堂DYは3月期企業の第1四半期と対象期間や会計基準が異なるため、絶対額の単純比較ではなく事業構造の方向性を比較)

■ 国内事業が業績を支える――電通は上半期最高益

 両社の決算において共通の原動力となっているのが、国内(日本)事業の伸びです。

 電通グループの日本事業は、売上総利益のオーガニック成長率がプラス5.0%を記録しました。持分法適用会社化に伴う影響等で売上総利益は同0.3%減の2,359億3,600万円となったものの、コスト削減や効率化が寄与し、日本事業の調整後営業利益は前年同期比3.6%増の604億9,000万円へと拡大。上半期として過去最高益を更新しました。収益性を示すオペレーティング・マージンも前年同期の24.6%から25.6%へと1.0ポイント上昇しています。

■ 博報堂DYもテレビ7%増、ネット17%増と好調

 博報堂DYにおいても国内の伸びが目立ちます。国内事業の営業利益は162億4,400万円(前年同期比16.4%増)と2割近い伸びを達成しました。

 国内における新規顧客の獲得や既存得意先との取引拡大に加え、デジタルホールディングスの新規連結効果が大きく寄与しました。

 媒体別の動向を見ると、テレビ広告が前年同期比7.3%増と堅調に推移したうえ、インターネットメディアも同17.0%増と二桁の伸びを見せました。「ネットが伸びてテレビが落ち込む」という単線的な動きではなく、主要媒体が揃って底堅さを発揮しています。業種別では「情報・通信」や「金融・保険」などが拡大を牽引しました。

■ 広告・マーケティングと周辺領域の拡張が同時進行

 両社の国内成長を支えているのは、従来型の広告枠の販売・仲介ビジネスだけにとどまりません。

 電通の日本事業では、インターネットやテレビなどのマーケティング事業に加え、デジタルトランスフォーメーション(DX)、ビジネス・トランスフォーメーション(BX)、さらにはスポーツ&エンターテインメント(SP&E)といった周辺・成長領域が全体の拡大に貢献しています。

 博報堂DYにおいても、インターネットメディアの17.0%増という伸びや、デジタルホールディングス連結によるデジタルマーケティング領域の強化が業績を押し上げました。

 両社では広告・マーケティングに加え、デジタル領域やDX・BXなど周辺領域への展開が進んでいます。広告ビジネスそのもののデジタル化と、企業の事業変革を支援する領域の拡大が同時に進んでいる点も、今回の決算から確認できます。

■ 電通、海外3地域のオーガニック成長率がマイナス

 国内の動きとは対照的に、両社の海外事業では、成長や収益面に課題がみられます。

 電通グループの海外事業における売上総利益のオーガニック成長率は、Americas(米州)がマイナス5.0%、EMEA(ヨーロッパ、中東及びアフリカ)がマイナス0.2%、APAC(日本を除くアジア太平洋)がマイナス3.8%となり、海外3地域のオーガニック成長率がいずれもマイナスとなりました。

 特に主力市場の一つであるAmericasでは、米国の減速が響き、円安による底上げ効果があったものの調整後営業利益は前年同期比11.8%減の293億9,800万円へと落ち込みました。APACも32億1,300万円の調整後営業赤字を計上しています。(※ただしEMEAについては、コスト削減効果等により調整後営業利益が同113.1%増の121億4,300万円と大幅増益を達成しており、経営基盤再構築の成果も表れています)

■ 博報堂DY、北米などの伸び悩みで海外赤字拡大

 博報堂DYにおいても、海外事業の厳しさが表れています。

 同社の海外事業の営業損益は37億5,400万円の赤字となり、前年同期の23億1,400万円の赤字から赤字幅が拡大しました。中東情勢の緊迫化に伴う現地景気の不透明感に加え、北米地域におけるトップライン(売上・収益)の伸び悩みなどが影響しています。

 両社とも、国内事業が伸びる一方、北米をはじめとする海外事業では成長・収益面の課題がみられます。

■ 国内好調と海外課題、今後の注目点

 電通グループは国内の調整後営業利益が過去最高を更新したものの、海外3地域でオーガニック成長率がマイナスとなりました。博報堂DYも国内営業利益が16.4%増加したものの、海外の営業赤字拡大が全体利益の押し下げ要因となっています。

 今後は、国内の広告・デジタル領域の動向に加え、北米を中心とする海外事業の収益改善が注目されます。特に海外事業の比重が大きい電通グループでは、グローバル市場における成長率や収益性の動向が引き続き注目されます。

■ 通期予想は両社とも従来の計画を維持

 通期の業績見通しについて、両社は従来公表していた計画を据え置いています。

 電通グループは2026年12月期の通期連結予想について、収益1兆4,915億円(前期比3.9%増)、売上総利益1兆2,302億円(同2.7%増)、調整後営業利益1,663億円(同3.6%減)、営業利益1,526億円を見込んでいます。年間配当予想も従来の0円を維持し、地政学リスクや世界経済の動向を引き続き注視する方針です。

 博報堂DYホールディングスも2027年3月期の通期連結予想を維持し、収益9,100億円(前期比5.7%増)、営業利益467億円(同4.5%増)、経常利益470億円(同2.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益260億円(同55.0%増)を見込んでいます。年間配当予想(1株あたり32円)も据え置きました。

■ 国内好調、その先の成長をどこに求めるか

 電通グループと博報堂DYホールディングスの最新決算では、国内市場を取り込む両社の動きが改めて示されました。博報堂DYではテレビ広告やインターネットメディアが伸び、電通ではDX・BXなどの領域も成長するなど、両社の国内事業が業績を支えました。

 一方で、北米を中心とする海外市場の伸び悩みが共通の課題となっており、国内と海外で明暗が分かれる格好となりました。

 国内でデジタル化と事業領域の拡大を進めながら、海外事業の収益性と成長性をいかに再構築していくか。変革を進める広告大手2社にとって、この2つの軸が今後の業績を見る上での注目点となります。(編集担当:エコノミックニュース編集部)