今回のニュースのポイント
住友金属鉱山、三菱マテリアル、JX金属、古河電気工業、住友電気工業の直近決算では、銅や金などの金属価格上昇や円安に加え、生成AIの普及を背景としたデータセンター投資の拡大が業績を押し上げました。資源・製錬など従来の非鉄事業が市況高の恩恵を受ける一方、AIサーバー向け半導体材料や電子材料、光通信機器・光デバイスなど高機能分野にも需要が波及しています。5社はいずれも足元の業績や事業環境を踏まえて通期業績予想を上方修正しており、非鉄各社に「金属高」と「AI」という二つの追い風が吹いています。
■ 非鉄5社に「金属高」と「AI」の二つの追い風
住友金属鉱山、三菱マテリアル、JX金属、古河電気工業、住友電気工業の大手非鉄・金属5社による直近決算が出そろいました。5社はいずれも第1四半期決算で全社業績が増益となり、そろって通期の連結業績予想を上方修正しました。
業績拡大を牽引しているのは単一の要因ではありません。一つは、銅や金といった主要金属価格の上昇と為替の円安進行による市況の追い風です。そしてもう一つが、生成AIの急速な普及に伴う世界的なデータセンター投資の拡大です。
非鉄・金属企業は、鉱山開発や製錬といった素材の上流工程を担うだけでなく、半導体材料、電子材料、光ファイバー、光デバイスなど、先端AIインフラに不可欠な製品群を幅広く供給しています。今回の決算からは、AI投資の波が半導体メーカーだけでなく、素材や通信インフラの基盤を担う非鉄業界にまで強く届いている構図が浮かび上がります。
■ 銅・金価格上昇、資源・製錬を押し上げ
まず、非鉄業界にとって従来型の成長エンジンである「金属高」と円安の波及効果です。
代表例となる住友金属鉱山の2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)連結決算(IFRS)は、売上高が前年同期比42.3%増の5,401億円、税引前利益が同211.4%増の1,180億円、親会社所有者帰属の四半期利益が同220.5%増の879億円と大幅な増収増益となりました。期間中の平均相場は銅が1トン当たり9,519ドルから1万3,324ドルへ、金が1トロイオンス当たり3,280.3ドルから4,516.4ドルへ上昇し、為替も前年同期の1ドル=144.60円から159.50円へ円安が進行。これにより鉱山開発を担う「資源セグメント」の利益が同98.7%増の712億円へ拡大したほか、「製錬セグメント」も前年同期の赤字から364億円の黒字へと転換しました。
同様に三菱マテリアルの第1四半期連結決算も、営業利益が329億円(前年同期比約12.5倍)へと急拡大しました。タングステン、銅、金などの主要金属価格上昇や円安に加え、資源事業における受取配当金の増加などが全体を押し上げました。資源価格や市況変動は、非鉄各社の収益を左右する強力な要因として今期も大きく機能しています。
■ AI需要、半導体・電子材料にも波及
二つ目の追い風である「AI需要」は、各社の高機能材料部門へ明確な恩恵をもたらしています。
先端材料に強みを持つJX金属の第1四半期連結決算では、AIサーバー向け先端半導体の需要拡大を受け、半導体用スパッタリングターゲットや情報通信向けの圧延銅箔、チタン銅の販売が好調に推移しました。セグメント営業利益は「半導体材料」が前年同期比69.6%増の144億円、「情報通信材料」が同70.6%増の131億円へと大幅増益を達成しました。なお、同社の営業利益が同175.5%増(約2.8倍)の814億円へ拡大した背景には、市況高に加え「基礎材料」における銅鉱山会社株式の一部譲渡に伴う譲渡益なども含まれており、AI需要以外の要因も織り込んで評価する必要があります。
また、住友金属鉱山でもAIデータセンター用途の粉体材料やデバイス材料が牽引し、「材料セグメント」の利益が前年同期比約3.6倍の91億円へ拡大。三菱マテリアルでもAI関連製品の需要拡大が「高機能製品事業」の成長に寄与しました。AIサーバーの高性能化に伴い、半導体そのものだけでなく「半導体を作るための素材」へも需要が拡大しています。
■ データセンター投資、今度は「光通信」へ
AIデータセンターへの投資拡大は、膨大なデータをやり取りするための光通信インフラへの需要拡大にもつながっています。この流れが電線大手2社の業績を力強く押し上げています。
古河電気工業の第1四半期連結決算は、営業利益が前年同期比205.4%増(約3.1倍)の254億円に達しました。データセンター向け製品の販売拡大により、「光ソリューション事業」の営業損益が前年同期の赤字から91億円の黒字へと大幅改善したほか、「情報コンポーネント事業」の営業利益も同105.2%増の73億円へ倍増しました。
住友電気工業の第1四半期連結決算においても、データセンター向け光配線機器や光デバイスの販売が急増し、「情報通信関連事業」の営業利益が272億円(前年同期比約3.3倍)へと大幅に拡大しました。AIデータセンター投資は「半導体」から「電子材料」を経て、データを伝送する「光配線・光デバイス」へと波及経路を広げています。
■ 5社そろって通期予想を上方修正
足元の好調な進捗と好環境を受け、5社はそろって2027年3月期通期の業績予想を引き上げました。
住友金属鉱山は通期の税引前利益予想を従来の2,290億円から3,240億円へ、三菱マテリアルも営業利益予想を1,300億円(前期比114.9%増)へ引き上げ、年間配当予想を100円から116円に増額しました。JX金属は営業利益予想を1,900億円から2,320億円へ、古河電気工業も1,230億円へと上方修正しました。住友電気工業も営業利益予想を250億円引き上げ、4,500億円としています。
第1四半期の好調な進捗に加え、市況や為替、AI関連需要など足元の事業環境を通期見通しにも反映している点が共通しています。
■ 金属市況とAI投資、二つの追い風は続くか
もっとも、全事業が一様にリスクなしで拡大しているわけではありません。住友電気工業では、主力の「自動車関連事業」の営業利益が原材料価格高騰などの影響により前年同期比2.1%減となるなど、分野による不均一さも残ります。
今後の業績は、銅や金などの金属価格や為替の動向に加え、AIデータセンター向け投資の拡大ペースや、半導体材料・光通信部品の需要がどこまで持続するかにかかっています。従来型の市況要因と、AIインフラという新たな需要の双方が非鉄各社の成長をどこまで牽引できるかが、今後の焦点となりそうです。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













