製紙3社、価格改定と構造改革が収益左右 紙需要減少で事業転換急ぐ

2026年08月20日 14:18

製紙

製紙大手3社の2027年3月期第1四半期決算。価格改定や構造改革の進捗によって収益に明暗が分かれた。(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

製紙大手3社の2027年3月期第1四半期(2026年4~6月)決算では、価格改定や構造改革の進捗によって収益に差が出ました。王子ホールディングスは段ボールなどの価格改定浸透や生産体制再構築により営業増益、三菱製紙はドイツ事業の構造改革やコスト削減によって営業黒字へ転換しました。一方、日本製紙は国内事業で価格改定効果が表れたものの、海外事業の採算悪化などから営業利益が47.0%減少しました。印刷用紙などの需要減少が続くなか、高付加価値分野への転換や生産体制の見直しが各社共通の課題となっています。

■ 王子増益、三菱は黒字転換 日本製紙は47%減益

 製紙大手3社の2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)連結決算が出そろいました。製品価格の改定や事業構造改革の進捗状況によって、業績の明暗が分かれる結果となっています。

 各社の業績概要は以下の通りです。

・王子ホールディングス:売上高 4,685億8000万円(前年同期比2.4%増)、営業利益 38億8100万円(同4.8%増)、親会社株主に帰属する四半期純損益 31億6200万円の黒字(前年同期は51億5700万円の赤字)

・日本製紙:売上高 3,144億6600万円(前年同期比7.5%増)、営業利益 29億900万円(同47.0%減)、親会社株主に帰属する四半期純損益 2億3300万円の赤字(前年同期は19億500万円の黒字)

・三菱製紙:売上高 386億2000万円(前年同期比2.1%減)、営業利益 3億9300万円の黒字(前年同期は12億2100万円の赤字)、親会社株主に帰属する四半期純損益 21億5900万円の黒字(同13億1600万円の赤字)

 王子ホールディングスが増収増益および最終黒字化を果たし、三菱製紙は減収ながら営業黒字転換を達成しました。一方、日本製紙は売上高を伸ばしたものの営業利益がほぼ半減し、最終赤字へ転落しました。3社の業績には差が出ましたが、共通しているのは価格改定や生産体制の再構築、海外事業の見直しなどを通じて構造的な需要変化に対応しようとしている点です。

■ 王子、価格改定と構造改革で原材料高を吸収

 王子ホールディングスは、中東情勢を受けた原材料価格の高騰という逆風に直面しながらも営業増益を確保しました。

 国内では段ボールなどの価格転嫁の浸透や王子ネピアでの生産体制再構築が寄与。海外においてもオーストリアのパルプメーカーAustroCel社の買収・連結化や円安による換算影響に加え、Oji Fibre Solutionsにおける事業撤退などの構造改革が進んだことで収益が改善しました。

 セグメント別では「生活産業資材」の営業利益が58億3100万円(前年同期は2億2800万円)と大幅増益を達成し、「機能材」も高付加価値品の拡販などにより営業利益40億2100万円(前年同期比41.8%増)となりました。一方、需要減退と原材料高が直撃した「印刷情報メディア」は営業損失33億3000万円(前年同期は2億5400万円の赤字)と赤字幅が大幅に拡大しました。生活産業資材や機能材が利益を伸ばす一方、需要減少が続く印刷情報メディアでの採算悪化が鮮明となっています。

■ 三菱製紙、減収でも黒字化 高付加価値分野へ転換

 三菱製紙の決算は、縮小市場における構造改革の成果が数字に表れた象徴的な事例といえます。

 売上高は前年同期比2.1%減となったものの、営業損益は前年同期の12億2100万円の赤字から3億9300万円の黒字へと転換し、約16億円の改善を記録しました。背景にあるのが、ドイツの連結子会社で前期に実施した希望退職などの事業構造改革効果の発現です。全社的な生産効率化やコスト削減も奏功し、原燃料高を吸収して本業の黒字化に結びつけました。

 さらに、「機能商品事業」ではドイツ事業の収益改善に加え、蓄電デバイス用セパレータや水処理膜基材といった高付加価値製品が伸び、セグメント利益が8億3200万円(前年同期は2400万円)へ拡大しました。既存事業の固定費削減を進めるだけでなく、成長分野へリソースをシフトする動きが収益を押し上げています。

■ 日本製紙、国内改善も海外苦戦 事故・被災で通期予想未定

 日本製紙は売上高が前年同期比7.5%増となったものの、営業利益は47.0%減と大きく落ち込みました。

 国内事業では、原燃料高や人件費上昇があったものの、コストダウンや前年度からの製品価格改定効果が表れ、主力の「紙・板紙事業」の営業損失が1億4400万円(前年同期は9億200万円の赤字)へ改善しました。しかし、海外事業において豪州子会社の現地経済回復遅れや、米国子会社での価格競争激化による市況軟化が響き、全体の利益を大きく押し下げました。

 さらに、同社は同日、2027年3月期の通期連結業績予想を従来の公表値から「未定」へ変更しました。2026年5月に発生した米国子会社でのタンク倒壊事故、および同年7月の熊本地震による八代工場(熊本県八代市)の被災について、現時点で業績への影響額を合理的に算定することが困難であるためとしています。海外事業の採算悪化という足元の課題に加え、二つの特殊要因の精査が今後の焦点となります。

■ 縮む紙需要、価格転嫁から「事業そのもの」の見直しへ

 今回の3社決算から浮き彫りになったのは、王子ホールディングスにおける価格改定と海外構造改革、三菱製紙における固定費削減と高付加価値品拡販、日本製紙における国内改善と海外事業見直しという、それぞれの取り組みの差です。

 王子ホールディングスの印刷情報メディアでの赤字拡大や、三菱製紙の機能商品事業での大幅増益に見られるように、従来型の紙需要が縮小する一方、高付加価値分野の重要性が高まっています。そうした環境下で、紙・パルプで培った技術を生かし、包装資材や機能材、蓄電デバイス関連、水処理基材などへ事業領域をどこまで広げられるかが鍵を握ります。

 通期見通しについては、王子ホールディングスと三菱製紙が従来の据え置きとし、日本製紙が事故・被災影響の調査のため未定へと変更しました。製紙各社は価格改定による採算改善を進める一方、需要回復が見込みにくい印刷用紙などの構造改革をさらに推し進め、高付加価値分野への事業転換を加速させることが求められています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)