今回のニュースのポイント
国税庁が公表した2025年度(令和7年度)の租税滞納状況によると、新たに発生した国税の滞納額は9935億円となり、前年度から10億円(0.1%)増加しました。一方、課税された89兆7949億円のうち約98.9%は滞納となることなく納付され、滞納発生割合は1.1%と低水準を維持しています。徴収現場ではデジタルの活用が進んでおり、AIを用いて滞納者ごとに「電話・訪問・文書」の最適な接触方法や電話がつながりやすい時間帯を予測しています。悪質な財産隠しには刑事告発、海外移転事案には外国税務当局との徴収共助、差し押さえ財産にはインターネット公売を実施するなど多角的な対応を行っています。
本文
国税庁は、2025年度(令和7年度)における国税の滞納状況を取りまとめ公表しました。
2025年度の徴収決定済額(申告等により課税された金額)は89兆7949億円で、このうち約98.9%が滞納となることなく納付されました。新たに発生した滞納額は9935億円で、前年度(9925億円)から10億円増加したものの、ピーク時であった1992年度(1兆8903億円)の約5割の水準となっています。課税額に占める新規滞納の割合(滞納発生割合)は1.1%でした。また、年度末時点で滞納整理中となっている残高は9847億円(前年度末比133億円増)で、過去最高だった1998年度末(2兆8149億円)の約3割となっています。
国税庁では、早期の税金徴収に向けて滞納整理にAI(予測AIおよび生成AI)を活用しています。予測AIにおいては、滞納者の過去の接触実績や申告データ、業種などの情報を基に、電話・臨場(訪問)・文書のうち最も接触できる可能性が高い手段を滞納者ごとに予測します。さらに電話催告については、曜日や時間帯ごとの応答可能性まで予測し、実効性の高いアプローチに役立てています。一方、生成AIについては、滞納者ごとの過去の整理実績データを要約し、優先的に対応すべき事案の選定や担当者間の引き継ぎ事務の効率化に利用しています。なお、生成AIは納税者情報の流出防止策を講じたセキュアな環境で運用されていると同庁は説明しています。
実際の催告実績として、2025年7月から2026年6月末までに各国税局(所)の納税コールセンターで催告対象となった114万8000者のうち、完納に至ったのは82万9000者(72.2%)、納付誓約となったのは11万6000者(10.1%)でした。全体の約8割において完納または納付誓約が確認されています。
通常の納付指導や催告の一方で、意図的に財産を隠匿して徴収を免れようとする悪質な事案に対しては、厳正な法的措置が執られています。同庁の発表事例によると、滞納法人の代表者が関与税理士から差し押さえの可能性を説明された後、法人の預金口座から現金を出金して自邸に保管したほか、新法人を設立して取引先に工事代金の振込先変更を依頼した事案に対し、国税徴収法違反(滞納処分免脱罪)で告発を行いました。2025年度における同罪での告発は9件(14人・社)でした。
また、海外へ財産が移転された事案等に対しては、租税条約に基づき外国税務当局へ「徴収共助」を要請しています。確定申告を行った所得税および消費税を納付せずに出国した滞納者に対し、相手国当局へ徴収共助を要請して現地財産への徴収手続が進められた結果、再入国した滞納者が自主納付を行って完納に至った事例などが紹介されています。2025年度の日本から外国当局への共助要請は22件(累計146件)となりました。
さらに、滞納処分により差し押さえた財産については入札や競り売りによる公売を実施し、売却代金を滞納国税に充当しています。売却事例として、見積価額1390万円の自動車が1650万2000円、見積価額103万円の腕時計が140万1000円、見積価額140万円のバッグが300万6000円、見積価額50万9000円のブレスレットが91万8000円でそれぞれ落札されました。公売手続ではインターネットによる期間競り売りや電子入札などのデジタル化も推進されています。
2025年度の新規国税滞納額は9935億円となりましたが、全体としては約98.9%が滞納となることなく納付されています。徴収の現場では、AIによる最適な催告手段の予測や整理実績の要約から、悪質事案への刑事告発、国際徴収共助、インターネット公売に至るまで、多角的な手法を組み合わせた滞納整理が行われています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













