東芝、SiC半導体のしきい値電圧変動を50%低減 EV・データセンター向け

2026年09月30日 14:49

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東芝本社。東芝デバイス&ストレージは、トレンチゲート型SiC MOSFETのゲートしきい値電圧(Vth)の変動を、市販他社品との比較で約50%低減する技術を開発した(画像は資料写真)

今回のニュースのポイント

東芝デバイス&ストレージは30日、次世代パワー半導体であるトレンチゲート型SiC(炭化ケイ素)MOSFETにおいて、長期間の使用に伴うゲートしきい値電圧(Vth)の変動を抑える新技術を開発したと発表しました。ゲート酸化膜の界面処理条件を最適化することで電荷トラップの影響を抑制し、一定の測定条件下において市販の他社トレンチゲート型SiC MOSFETと比較してVth変動量を約50%低減しました。この技術を採用した1200V耐圧製品は2026年5月からテストサンプルを出荷しており、電気自動車(EV)やデータセンター電源などの用途での信頼性向上への貢献を見込んでいます。

本文
 東芝デバイス&ストレージ株式会社は30日、次世代パワー半導体として車載や産業機器向けに採用が進むSiC(炭化ケイ素)MOSFETについて、長期使用時の信頼性を高める新たなゲート形成プロセス技術を開発したと発表しました。長時間の使用や電圧ストレスによって生じる「ゲートしきい値電圧(Vth)」の変動量を、市販の他社トレンチゲート型SiC MOSFETと比較して約50%低減しました。同社はこの新技術を採用した1200V耐圧のトレンチゲート型SiC MOSFET「TW007D120E」について、2026年5月からすでにテストサンプルの出荷を開始しています。

 SiC MOSFETは、従来のシリコン(Si)MOSFETよりも高効率な電力変換が可能な次世代パワー半導体として、EVなどを中心に採用が拡大しています。なかでもゲート電極を溝(トレンチ)状に配置するトレンチゲート構造は、低いオン抵抗と高い電流密度を実現できる特長があり、さらなる低損失化が期待されています。

 一方で、SiC MOSFETにおいては長期間にわたり電圧ストレスが加わることでVthが変動し、動作の安定性や導通損失に影響を及ぼす現象が信頼性上の課題とされてきました。特に近年では、ゲート電極に正電圧と負電圧が繰り返し印加されることで、印加サイクル数に応じてVthが変動する現象が報告されています。東芝によると、このVth変動は一部のトレンチゲート型構造において顕著に表れる場合があり、高効率化と長期信頼性を高次元で両立させるための技術的ハードルとなっていました。

 東芝はこの課題に対し、トレンチ部分のゲート酸化膜を形成する際の界面処理に着目しました。評価を通じて界面処理における窒化条件などによって正負の電圧ストレス後のVth変動量が大きく変化することを確認し、さらに解析の結果、界面処理によって生成される電荷トラップがVth変動に関与していることを示唆する結果を得ました。これらの知見に基づき界面処理条件などを最適化することで、低いオン抵抗を維持したままVth変動を抑えるプロセス技術を確立しました。

 今回の「Vth変動量約50%低減」の実績は、25℃環境下、ゲート・ソース間電圧+25V/-10V、Duty 50%、400kHz、10¹¹サイクル時点における、市販の他社トレンチゲート型SiC MOSFETとの比較による東芝調べの結果です。この結果について東芝は、Vth変動の大幅な抑制に有効で、デバイスの長期信頼性向上に寄与するとしています。

 東芝は今後、同技術のSiC MOSFETへの適用を拡大し、EVなどの車載機器、再生可能エネルギー発電システム、データセンター用電源といった産業機器向けに、高信頼・高効率なSiCパワーデバイスのラインアップを拡充する方針です。なお、本開発成果の一部には、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の補助事業(JPNP21029)の成果が活用されています。

 本技術は、9月27日から10月2日まで横浜市で開催されているSiC関連の国際学会「ICSCRM 2026」にて発表されました。電力変換用途での信頼性向上と省エネルギー化に向け、東芝は製造プロセスの高度化を通じたSiCパワーデバイスのさらなる高信頼化と高効率化を進める方針です。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)