かかりつけ医での検診をほとんど受けないまま、飛び込み出産する「未受診妊婦」が問題となっている。06年~07年にかけて奈良県で相次いだ「妊婦たらい回し」事件にも、一部にこうした背景があったとされる。「未受診・飛び込み出産」は、母子ともに極めてリスクが高い。
大阪府では全国に先駆け、09年から未受診妊婦の実態調査を実施してきた。大阪では1年間に約7万5000件の分娩を、約150の施設で行っている。5回目となる今回も、全ての施設へ調査を依頼。その結果、285件の「未受診妊婦」の報告があった。前年からは22件減少し、飛び込み出産の件数は底を打ったようだ。多方面の支援活動が一定の成果をあげたとみられるが、未だに約250分娩に1回は「飛び込み出産」だ。
妊婦の年齢は、13歳から45歳までと幅広い。未成年も17.5%を占めた。24歳以下の若年層と、35歳以降に2つの山があり、全体としては若い女性が多くなっている。婚姻関係は家庭環境の複雑さや未成年の多さを反映してか、6割以上が「未婚」だった。
職業をみると、「不明」の17.5%を除いても、不安定雇用や無職の多さが際立っている。正規雇用が確認できたのはわずか4.6%。非正規雇用が19.3%、学生が3.9%で、最多は「無職」の54.7%だった。パートナーの職業は50.2%が「不明」。正規雇用が確認できたのは14.7%のみだった。次いで非正規雇用が21.4%、10.5%が「無職」となっている。
飛び込み出産をした妊婦のうち、3割は生活保護を受けていた。未受診となった理由も「経済的問題」が29%と最多を占め、貧困の根は深い。次いで多いのが「知識の欠如」で18%、「妊娠に対する認識の甘さ」13%などとなった。「妊娠の事実の受容困難」も8%いた。
支援の充実が急がれるが、一部には医療機関や自治体からの申し入れを拒否するような母親もみられるという。こうした母子との連携を確実にしておかなければ、支援策をいくら充実させても届かないおそれがある。(編集担当:北条かや)