2014年の生命保険業界に起きた大きな出来事を振り返って見ると、1つは法律改正、もう1つは日本生命の中間期決算での保険料収入でトップ陥落であろう。
2014年度に生命保険にとって大きな出来事の1つ目は、5月23日に成立し2016年に施行される見込みの「保険業法等の一部を改正する法律」である。改正の背景には、3つの保険業界を巡る経営環境の大きな変化がある。それは「保険商品の複雑化・販売形態の多様化」と「乗合代理店(複数の保険会社の商品を販売する代理店)等の出現」、および「海外展開をはじめとする積極的な業務展開の必要性」である。
具体的な法律改正の内容は、「生命保険の信頼性確保」として「保険募集の基本的ルールの創設」「保険募集人に対する規制の整備」であり、「保険市場の活性化」として「海外展開に係る規制緩和」「保険仲立人に係る規制緩和」「実態に合った顧客対応を可能とするための規制緩和」について行われている。
今回の法律の改正で、生命保険を利用する側として影響を受けるのは、「保険募集の基本的ルールの創設」である。現状は虚偽説明や重要事項の不告知など禁止行為に限定されていた従来の募集規制に加え、「積極的な顧客対応」を求める募集規制が導入される。
具体的には、顧客ニーズの把握によるニーズに合った保険プランの具体化と提案プランの最終的な確認、顧客が保険加入の適否を判断するのに必要な情報として、保険金の支払条件(どのような場合に保険金が支払われるのか)、保険期間、保険金額など、その他顧客に参考となるべき情報(ロードサービスなどの付帯サービス)、複数の保険会社の商品の比較推奨販売を行う場合には、取扱商品のうち比較可能な商品の一覧、特定の商品の提示・推奨を行う理由などが義務として課せられる。
しかし、これらはいずれも顧客のことを考えて勧誘をするなら、今までも当然に必要であったことである。改めてこのような基本的なことを法律で定めるのは、いかに現在の生命保険の営業方法が保険会社の都合の良いように行われているかを示している。また、同時に生命保険に加入する側にも生命保険に関する知識を持つことが必要なことを示していると言えるであろう。
2014年度に生命保険にとって大きな出来事の2つ目は、中間決算ベースではあるが、一般の会社の売上に相当する保険料収入で日本生命が第一生命<8750>に首位を奪われたことである。第一生命<8750>が伸びた理由として、第一生命<8750>の株式会社への移行と銀行窓口を通じて販売した外貨建て個人年金保険の売れ行きが好調だったことがあげられる。前者は今後も構造的な強みだが、後者は日銀の「異次元緩和」による超低金利で、円預金より外貨建て個人年金保険の利回りが高い点が人気を集めたためで、日本生命の反撃を受けやすく、金利の動向次第では人気が弱まり収入が落ちる可能性がある。
まだまだ、収益力や総資産では日本生命が上回っているが、保険料収入で第一生命<8750>がじわじわとその差を広げ、収益、総資産でも生命保険業界のガリバー日本生命に肉薄していくかが注目される。(編集担当:阪木朱玲)