本格的な花粉シーズンの到来で、テレビなどでも花粉情報などの話題が多くなってきた。例年だと、スギ花粉のピークは3月。飛散時期は5月上旬まで続き、花粉症キャリアの人にとっては憂鬱な3ヶ月間が始まる。
そこで気になるのが、今年の花粉の量。花粉の飛散数は、前年夏の気象条件や前年春の花粉飛散量などが大きく影響するといわれている。気象庁の予測によると、2014年の夏は、関東地方では気温の高い所が多かったこと、また前回の飛散量が少なかったことなどから、今年の飛散数は多いところで前年の2倍以上になるところもあるとみている。とくに、「最高気温が高めの日」や「雨の翌日で天気の良い日」、「風が強く、空気が乾燥した晴天の日」には花粉の飛散量が増えるといわれており、注意が必要だ。
今や、日本人の5人に1人が花粉症キャリアといわれ、その割合は減少するどころか年々増えているという。それに伴って花粉症対策市場も拡大を続けており、関連市場の規模は500億円を超えるといわれている。症状の辛さとは裏腹に、市場としては流行に左右されることなく安定して利益の望める優良市場で、目薬や洗眼薬、鼻炎治療剤など従来の一般用医薬品の他、空気清浄機等の家電や、高密度マスクなどの衛生雑貨、抗アレルギー食料品、さらには避暑地ならぬ避粉地ツアーなどの旅行商品にいたるまで、範囲も広い。
その一方で、花粉症による経済的損失は、その数倍以上にのぼる。花粉症による集中力の低下などで生産性が落ちるだけでなく、外出を控えるために1月から3月期の個人消費が激減すること、さらには花粉症に関連する医療費も年間3500億円以上の損失と言われており、それらすべてを合わせると、その額はなんと1兆円を超すとみられ、深刻な社会問題となっている。
そんな中、いくつかの明るいニュースもある。それは、2014年の6月から花粉(抗体)のエキスを舌下から患者の身体に吸収させる「舌下減感作療法」が保険適用になったことだ。これまで花粉症の治療には抗ヒスタミン剤が用いられる対処療法が一般的だったが、舌下減感作療法は患者の体質そのものを変えて根治を目指すものだ。上手く行けば、花粉症患者の増加を食い止め、減少させることができるかもしれない。減感作療法はこれまで注射を用いるのが一般的だったうえに、数年に渡る長期通院が必要など、患者の負担が大きいという理由で人気がなかったが、自宅でできる舌下減感作療法が保険適用になったことで一気に普及するとみられている。アナフィラキシーショックや口腔内のかゆみ、喘息発作、腹痛、嘔吐などの副作用も懸念されるため、処方には医師の診断が必要だが、それでも格段に負担が減るのは間違いない。
また、自然の食品を利用した花粉症対策も注目されている。例えば、ミツバチ産品の製造販売で知られる山田養蜂場が2011年に発表した同社の鳥取大学との共同研究結果報告によると、スギ花粉飛散前からの花粉荷含有プロポリス食品 (花粉荷エキス、ブラジル産プロポリスエキスなどを含む)の予防的な摂取が、花粉症治療薬の使用を低減させることをプラセボ対照二重盲検試験により確認している。
プロポリスはミツバチが木の芽や樹液などの植物源から収集した樹脂製混合物で「天然の抗生物質」ともいわれるほど非常に強力な殺菌作用を有するものだ。同社のこの研究結果により、花粉荷含有プロポリス食品を摂取することで、花粉症治療薬の使用量や頻度を減らすことができ、治療薬を服用した際の眠気や、口や眼球の乾燥などの副作用も軽減され、花粉症患者のQOL(生活の質)向上が期待されている。
舌下減感作療法中プロポリス食品などを併用すれば、花粉症の薬の副作用はかなり楽になるに違いない。根絶とはいかないまでも、患者数も減るだろう。当然、日本の経済的損失も大幅に軽減されるはずだ。何よりも、この時期に元気をなくしていた人が元気になる。景気回復の糸口は、意外とこんなところにあるのかもしれない。(編集担当:藤原伊織)