今回のニュースのポイント
国内スポーツ用品大手4社の最新決算では、アシックス、ミズノ、ヨネックス、ゼットの4社がそろって増収増益となりました。ランニングやゴルフ、バドミントン、野球など幅広い競技用品の需要が堅調に推移したほか、スポーツシューズを日常のファッションに取り入れるライフスタイル需要の拡大や海外市場の成長が業績を押し上げました。 アシックスは中間期として過去最高益を更新し、通期売上高予想を初の1兆円超となる1兆500億円へ上方修正。ミズノも第1四半期として過去最高業績を記録しました。各社は競技用品の枠を超えた技術応用やマーケティング投資、社内効率化などを推進しており、スポーツ市場の「日常化」と「グローバル化」を取り込む各社の異なる成長モデルが表れています。
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国内スポーツ用品大手4社(アシックス、ミズノ、ヨネックス、ゼット)の最新決算が出そろいました。4社すべてが増収増益となりました。スポーツ需要の広がりとともに、競技用品から日常生活への用途拡大や海外市場でのブランド浸透が進んでおり、各社が異なる成長エンジンを発揮しています。
■ スポーツ用品4社、そろって増収増益
今回決算を発表した主要4社の直近業績概要(売上高、営業利益等、前年同期比)は以下の通りです。
・アシックス: 売上高 5,344億8,300万円(前年同期比 32.7%増)、営業利益 1,204億8,600万円(同 48.5%増)
・ミズノ: 売上高 715億5,000万円(同 12.6%増)、営業利益 83億6,000万円(同 33.1%増)
・ヨネックス: 売上高 454億6,800万円(同 14.1%増)、営業利益 68億6,700万円(同 9.4%増)
・ゼット: 売上高 155億8,600万円(同 7.7%増)、営業利益 4億3,400万円(同 32.2%増)
(※アシックスは2026年12月期中間連結決算、その他3社は2027年3月期第1四半期連結決算。決算対象期間や規模が異なるため、絶対額の比較ではなく方向性を分析)
規模や主軸とする競技領域が異なる4社ですが、そろって増収増益を確保しました。特にアシックス、ミズノ、ゼットの3社は本業の利益を示す営業利益が3割以上の大幅増益を記録しています。
■ アシックス、売上高32%増 通期初の1兆円へ
業績の拡大ペースで際立ったのがアシックスです。2026年12月期中間決算は、売上高が前年同期比32.7%増の5,344億8,300万円、営業利益が同48.5%増の1,204億8,600万円、中間純利益が同53.3%増の821億7,100万円となりました。売上高は中間期として初めて5000億円の大台を突破し、営業利益とともに中間期の過去最高額を大きく更新しました。
円安推移による押し上げ効果だけでなく、為替影響を除いた実質ベースでも売上高は前年同期比22.0%増、営業利益は同37.7%増と力強い成長を見せています。売上高営業利益率は前年同期の20.1%から22.5%へと上昇しました。
上期の好調を受け、同社は通期の連結売上高予想を従来の9,500億円から1兆500億円(前期比29.5%増)へと上方修正しました。達成されれば、アシックスとして初となる年間売上高1兆円の大台突破となります。
■ ランニングだけではない、スポーツスタイルが83%増
アシックスの成長を支えているのは、主力のランニングシューズだけにとどまりません。
主力の「パフォーマンスランニング」は売上高2,206億5,200万円(前年同期比19.3%増)、カテゴリー利益580億8,200万円(同24.8%増)と着実に拡大しました。一方、今回特に高い伸びを示したのが、スポーツシューズのデザインや機能を日常生活向けに落とし込んだ「スポーツスタイル」です。
「スポーツスタイル」の売上高は前年同期比83.0%増の1,231億8,600万円、カテゴリー利益は同103.0%増(2倍超)の419億2,300万円と急伸しました。さらにラグジュアリーライフスタイルブランドの「オニツカタイガー」も売上高が同35.9%増の895億3,300万円となり、カテゴリー利益率は39.7%という高い収益性を維持しています。
スポーツシューズが「競技用」から「日常のファッション・ライフスタイル用途」へと受け入れられる範囲を広げていることが、同社の大きな成長動力となっています。
■ ミズノ、第1四半期過去最高 技術の横展開が奏功
ミズノの2027年3月期第1四半期決算も、売上高が前年同期比12.6%増の715億5,000万円、営業利益が同33.1%増の83億6,000万円となり、売上高およびすべての利益項目で第1四半期として過去最高を更新しました。
国内市場ではフットボールやゴルフ、スポーツスタイルシューズが好調に推移しました。注目されるのは、長年培った技術の競技間・領域間での横展開です。ゴルフ分野では、野球バット開発で蓄積した技術を応用した新製品ゴルフクラブ「JPX ONE」がヒットし、業績に貢献しました。
また、ランニングシューズのクッション性や耐久技術を応用したワークシューズ(作業靴)などのワークビジネスも、BtoB取引先の拡大によって成長しています。同社も競技用だけにとどまらず、技術応用を通じて新たな市場領域を開拓しています。
■ 海外市場が伸長 欧州で大幅増益
日本ブランドの海外市場における存在感の高まりも共通の追い風となっています。
アシックスは日本、北米、欧州、中華圏など全7地域で増収増益を達成しました。特に欧州地域は「スポーツスタイル」や「オニツカタイガー」の大幅伸長により売上高が前年同期比46.4%増、セグメント利益が同63.1%増と急拡大しました。
ミズノも海外市場が業績を牽引しました。欧州ではランニングやゴルフに加えてスポーツスタイルシューズの販売が拡大し、営業利益が前年同期比167.7%増と急増。米州でもゴルフや野球、ランニングが好調で第1四半期として過去最高業績を達成するなど、グローバル市場での需要を取り込んでいます。
■ ヨネックス、バドミントン需要拡大と「Head-to-Toe」
ヨネックスの2027年3月期第1四半期決算は、売上高が前年同期比14.1%増の454億6800万円、営業利益が同9.4%増の68億6700万円、四半期純利益が同31.9%増の55億900万円となり、増収増益を確保しました。
アジアに加えて欧州など世界的に広がるバドミントン需要をとらえたほか、テニス分野ではラケットだけでなくウェアやシューズまで含めた「Head-to-Toe(頭からつま先まで)」で全身を揃える提案が進み、商品群全体の販売が拡大しました。地域別では主力の日本(売上高12.5%増)、アジア(同16.1%増)が堅調だったほか、欧州も売上高23.3%増、営業利益は前年同期比2.6倍(161.4%増)と大幅伸長を見せました。
■ ヨネックス、将来を見据えた先行投資
一方でヨネックスの決算からは、成長市場への投資に伴うコスト面の影響も表れています。
全社で14.1%の増収となったものの、原材料価格の高騰に加え、広告宣伝費や人件費などのグローバルマーケティング投資が増加したことで、営業利益の伸びは9.4%にとどまりました。特に重点地域としてブランド認知拡大の先行投資を投じた北米市場では、現地通貨ベースの伸び悩みも重なり、営業利益が900万円(前年同期比96.6%減)となりました。
足元の利益確保と、中長期的な世界シェア拡大に向けたブランド投資とのバランスが、今後の注目点となります。
■ ゼット、野球・サッカー需要と物流効率化
卸売を柱とするゼットの2027年3月期第1四半期決算は、売上高が前年同期比7.7%増の155億8,600万円、営業利益が同32.2%増の4億3,400万円と増収増益を達成しました。
主力である「ゼットベースボール」のユニフォームやスパイクのほか、サッカー、テニス・バドミントン、卓球用品など幅広い競技用品の需要が堅調に推移しました。自社製造分野でもプロ選手の活躍等を背景にオーダーグラブの販売が伸びました。
同社の利益成長を支えたもう一つの要因が社内の効率化です。提案型営業による販売拡大とともに、在庫流動管理の適正化や省人化に向けた物流設備投資を推進しました。製造コスト高止まりなどの逆風下で、社内改革と物流の適正化が営業利益3割増という採算改善につながっています。
■ 拡大する「スポーツ用品」の市場領域
今回の4社決算からは、各社の取り組みを通じてスポーツ用品市場そのものが多角化している実態が確認できます。
・アシックス: 競技用ランニング + ファッション・ライフスタイル(スポーツスタイル・オニツカタイガー)
・ミズノ: 競技用品 + 他競技への技術応用(ゴルフ等) + ワークビジネス
・ヨネックス: 競技のグローバル化(バドミントン) + カテゴリー横断展開(Head-to-Toe)
・ゼット: 複数競技の需要取り込み + 営業・物流改革による採算向上
単に「その競技をする人の数(競技人口)」に依存するビジネスから、スポーツで培ったデザインや機能性、技術を、日常着や仕事、他競技、周辺用品へと広げることで市場空間そのものを拡大させています。
■ 通期予想、上方修正2社・据え置き2社
通期の業績見通しにおいては、各社のスタンスが分かれました。
中間期で過去最高益を更新したアシックスは、通期売上高を1兆500億円(前期比29.5%増)、営業利益を1,950億円(同36.8%増)へ上方修正。年間配当予想も従来の38円から44円へ増配する方針です。ヨネックスも直近の業績動向を踏まえ、通期予想を売上高1,810億円(前期比10.6%増)、営業利益189億円(同14.2%増)へ上方修正しました。
一方、ミズノとゼットの2社は従来の通期計画を据え置いています。ゼットは第1四半期で営業利益が32.2%増加したものの、通期営業利益9億8,000万円(前期比21.7%減)とする従来予想を維持しました。
■ 日本のスポーツ用品、世界市場と「日常」へ
大手4社の決算からは、ランニング、ゴルフ、バドミントン、野球をはじめとするスポーツ需要の底堅さが示されました。
同時に明確になったのは、日本のスポーツ用品メーカーの主戦場が「競技場の中」から「世界中の日常生活」へと広がっていることです。アシックスやミズノのようにスポーツ技術・デザインを日常や仕事へ応用する動き、ヨネックスのように競技そのものの世界的広がりを取り込む動きなど、成長のアプローチは多様化しています。
スポーツから生まれたブランドと機能を、世界市場と人々の日常生活へどこまで浸透させられるか。日本のスポーツ用品各社の成長領域は新たな段階に入っています。(編集担当:エコノミックニュース編集部)













