タイヤ大手3社がそろって増収増益 それでも分かれた通期見通し

2026年08月24日 12:22

タイヤ

タイヤ大手3社は2026年12月期中間決算でそろって増収増益となった一方、通期業績予想への対応は上方修正、据え置き、利益予想の下方修正と分かれた(イメージ画像)

今回のニュースのポイント

ブリヂストン、横浜ゴム、住友ゴム工業の2026年12月期中間決算は、3社そろって前年同期比で増収増益となった。高付加価値タイヤの拡販や事業構造改革、欧州でのブランド展開などが業績を押し上げた。一方、通期業績予想は横浜ゴムが上方修正、ブリヂストンが据え置き、住友ゴムは売上予想を引き上げる一方で利益予想を下方修正。好調な上期の裏で、各社の収益構造や下期への業績判断の違いが鮮明となった。

■ 3社そろって中間増収増益の好スタート

 国内タイヤ大手3社の2026年12月期中間決算(1〜6月)が出そろいました。業界最大手のブリヂストンをはじめ、横浜ゴム、住友ゴム工業の3社がいずれも前年同期比で増収増益を達成し、タイヤ各社の堅調な業績が示されました。

 各社の業績数字を見ると、上期の好調さが際立ちます。

・ブリヂストン:売上収益 2兆3,216億67百万円(9.7%増)、調整後営業利益 2,808億71百万円(19.7%増)

・横浜ゴム:売上収益 6,393億97百万円(10.4%増)、事業利益 958億46百万円(54.3%増)

・住友ゴム工業:売上収益 6,197億98百万円(8.3%増)、事業利益 398億12百万円(40.6%増)

(※3社ともIFRSを採用。ブリヂストンの売上収益・調整後営業利益は継続事業ベース。利益指標は各社が本業の収益力を見るために用いる指標を記載)

 各社で採用する主要な利益指標に違いはあるものの、いずれも増収率を上回る大幅な利益成長を見せました。しかし、力強い上期結果に対する通期見通しの判断においては、3社の姿勢が明確に分かれる結果となりました。

■ ブリヂストンは大幅増益も通期計画を維持

 業界最大手のブリヂストンは、中間期の売上収益が2兆3,216億67百万円(前年同期比9.7%増)、調整後営業利益が2,808億71百万円(同19.7%増)となりました。親会社の所有者に帰属する中間利益も、継続事業ベースで2,060億83百万円(同78.9%増)と大幅に拡大しています。

 上期は極めて堅調な進捗を示したものの、通期の連結業績予想については従来計画を据え置きました。通期見通しは売上収益4兆5,000億円(前期比1.6%増)、調整後営業利益5,150億円(同4.3%増)、親会社所有者帰属当期利益3,400億円(同3.9%増)を維持しています。上期の増収増益に対して、現時点では年間計画を変更していません。

■ 横浜ゴムは通期予想を上方修正、年間配当も223円へ

 通期予想の引き上げに踏み切ったのが横浜ゴムです。中間期の売上収益は6,393億97百万円(前年同期比10.4%増)、事業利益は958億46百万円(同54.3%増)となり、中間期として過去最高を更新しました。国内での新車納入増加に加え、欧州などでの高付加価値品(ハイインチタイヤ等)の販売拡大や、農業機械・建設車両向けなどのOHT(オフハイウェイタイヤ)事業におけるマルチブランド戦略が奏功しています。

 高付加価値品やOHTなどの収益拡大を踏まえ、同社は通期予想を引き上げました。売上収益を従来の1兆3,000億円から1兆3,200億円(前期比6.9%増)へ、事業利益を1,800億円から1,925億円(同15.6%増)へ、親会社所有者帰属当期利益を1,040億円から1,170億円(同11.0%増)へ上方修正。年間配当予想も前期実績(134円)から89円増配となる223円へ大幅に引き上げました。

 なお、中間営業利益(100.0%増)と最終利益(104.2%増)の大幅な伸びには、旧イスラエル工場敷地の固定資産売却益353億2百万円が寄与しました。一方、米国工場閉鎖に伴う費用なども発生しています。本業の収益力を示す「事業利益」も同54.3%増と大きく伸びており、主力のタイヤ事業における収益改善が上方修正を支えています。

■ 住友ゴムは上期4割増益も、通期利益予想を下方修正

 今回の決算比較で最も対照的な動きを見せたのが住友ゴム工業です。同社の中間決算は、売上収益が6,197億98百万円(前年同期比8.3%増)、事業利益が398億12百万円(同40.6%増)、営業利益が381億46百万円(同41.1%増)と、上期時点では4割を超える大幅増益を達成しました。

 欧州で2026年1月からスタートした「DUNLOP」ブランドタイヤの販売開始効果や、国内での高性能オールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」の販売好調がタイヤ事業を強く引っ張りました。

 ところが、通期予想においては「売上予想を引き上げる一方、利益予想を引き下げる」という見直しを行いました。価格改定や円安効果を反映して売上収益予想を従来の1兆3,200億円から1兆3,300億円(前期比10.2%増)へ上方修正した一方、事業利益予想を1,120億円から960億円(同5.7%増)へ、営業利益予想を1,000億円から890億円(同7.8%増)へそれぞれ下方修正しました。欧州等での販売好調で増収は見込むものの、販売数量の減少や原材料価格・直接原価の上昇が下期の利益を圧迫するという見極めによるものです。

■ なぜ通期への判断が「三者三様」に分かれたのか

 3社ともに中間決算は「増収増益」という同一のスタートを切りながら、通期業績への判断は「上方修正」「据え置き」「利益下方修正」と見事なまでに分かれました。この違いは、各社が抱える事業構造や重点市場、コスト変動に対する見通しの相違を色濃く反映しています。

 横浜ゴムは高付加価値品やOHT事業のマルチブランド展開に加え、コスト改善や構造改革などが収益拡大に寄与しました。ブリヂストンは上期に高い利益水準を確保しながらも、年間の業績予想数値を変更していません。そして住友ゴムは、欧州でのブランド展開による売上拡大という好材料を確保しつつも、原材料高や原価上昇が利益を押し下げる影響を厳しく見積もった形です。

■ 焦点は売上規模だけでなく「稼ぐ力」へ

 今回の3社の決算からは、販売数量や売上規模だけでなく、高付加価値商品の比率や価格政策、原材料コストへの対応などが収益を左右していることがうかがえます。

 実際に今回の決算でも、横浜ゴムでは高付加価値商品やOHTの拡販、コスト改善が事業利益54.3%増へ結びつき、住友ゴムではDUNLOPの販売拡大で増収を確保しつつも原材料価格や直接原価の上昇が利益予想引き下げの要因となりました。ブリヂストンも調整後営業利益が19.7%増へと拡大するなど、各社において「どの商品を、どの市場で、どれだけ利益を確保して販売するか」という取り組みの差が数字に表れています。

 下期に向けては、原材料価格の推移や地域ごとの需要動向といった外部環境の不透明さが残ります。そのなかで、高付加価値商品の拡販やブランド戦略の推進、徹底したコスト改善によって、各社がどこまで「稼ぐ力」を維持・向上させられるかが今後の大きな焦点となりそうです。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)