石油製品の「目詰まり」は収束したのか 医療115品目、農水343件…政府資料で検証

2026年08月27日 12:06

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石油関連製品の供給を巡っては、燃料油だけでなく、潤滑油や包装資材、医療関連製品など幅広い分野で「目詰まり」が発生した(写真はイメージ)

今回のニュースのポイント

中東情勢の緊迫化に伴い発生した燃料油や潤滑油、包装資材など石油関連製品の供給障害(目詰まり)について、政府は26日、事態が収束に向かっているとの認識を示しました。経済産業省、厚生労働省、国土交通省、農林水産省の4省庁が公表した最新データを横断的に検証すると、医療分野での「対応検討中」品目のゼロ化や、農林水産・建設分野での供給要請件数の急激な減少が確認できます。当面の流通トラブルは大幅に改善していますが、原油調達自体は依然として既存備蓄の活用に依存する部分が残っており、構造的なリスクが完全に消滅したわけではありません。

本文
 中東情勢の緊迫化を受け、春以降、燃料油やガソリンにとどまらず、潤滑油、シンナー、食品・医薬品の包装資材、医療用手袋など幅広い分野で石油関連製品の供給不安(目詰まり)が表面化しました。政府は8月26日の関係閣僚会議で、こうした目詰まりについて政府への相談が劇的に減少し、収束に向かっているとの評価を示しました。政府が掲げる「収束」は、現場の最新データとどこまで一致しているのか。経済産業省、厚生労働省、国土交通省、農林水産省が公表した資料から横断的に検証します。

■原油調達:7・8月は約10割、9月は備蓄活用で供給確保

 まず、すべての石油製品の元となる原油調達の状況です。経済産業省の資料によると、2025年実績(日量236万バレル)を基準とした調達率は、4月に約25%(日量59万バレル)まで落ち込んだ後、5月62%、6月82%と回復し、7月と8月は前年平月比で「約10割(約240万バレル)」を確保できる見通しとなっています。

 これは単に中東からの調達が元通りになったわけではありません。米国に加え、アジア太平洋、中南米、中央アジア、アフリカ、カナダなど調達先の多角化が進んだ結果です。今後の見通しとして、9月分はタンカーのルート変更に伴い到着が遅れるため調達率が約8割(約180万バレル)に一時低下するものの、すでに放出した備蓄分を活用することで前年平月比並みの原油供給量を確保する見通しです。10月にはスエズ運河経由のタンカー到着が見込まれ、調達率は10割超(約260万バレル)に達する見込みです。政府は、調達先の多角化やすでに放出した備蓄分の活用によって供給量を確保できるとの見通しを示し、9月・10月は新たな国家備蓄放出を行わない方針です。

■医療分野:安定供給に影響の115品目、「対応検討中」がゼロに

 現場レベルで最も顕著な改善が見られるのが医療分野です。厚生労働省の調査(8月24日時点)によると、石油関連製品の供給不足を巡り相談対象となった事業者は延べ1万4,644事業者に上りました。厚労省が品目単位で精査し、安定供給に影響があると判断した115品目のうち、102品目が「解決済み」、13品目が「目詰まり解消の仕組み構築により解決の道筋が立った」と分類され、「対応検討中」の品目はゼロとなりました。

 石油製品の不足が医療に及ぼした影響は多岐にわたります。解決済みとなった品目には、人工透析用血液浄化器(ダイアライザー)の製造用溶剤、医療機器や小児カテーテルの滅菌に使われるA重油やガス、手術・歯科用器械を製造する際の潤滑油、錠剤包装シート(PTPシート)、消毒液の容器などが含まれます。また、優先供給の仕組みなどを導入した結果、分包紙では供給不安の相談があった373の薬局等すべてで不足が解消され、薬剤容器でも551の薬局等のうち522(約95%)で解消に至りました。

■建設・自動車:主要資材の供給要請が直近1週間で「ゼロ」に

 国土交通省が管轄する建設・住宅分野および交通・運輸分野でも、相談・要請件数は著しく減少しています。建設・住宅資材では、春から初夏にかけて塗料・シンナー、シーリング材、接着剤、断熱材、ユニットバス、塩ビ管、合板の7分類で供給要請が相次ぎました。しかし、直近1週間(8月14日~20日)のデータでは、これら主要7分類すべての供給要請件数が「ゼロ」となりました。

 自動車整備やトラック・タクシーなどの運輸事業者向けでも同様です。5月下旬にピークを迎えたエンジンオイルやシンナー・塗料の供給要請は、メーカーから直接購入できる「直販スキーム」の導入や安定供給の周知が進むなかで減少。直近1週間の供給要請は、シンナー・塗料が0件、エンジンオイルが1件にとどまりました。

■農林水産・食品:345件の供給要請のうち99%が対応完了

 農林水産省の資料によると、農林水産業・食品産業から寄せられた相談等は累計4,331件に達しました。このうち、具体的な物資の供給を求める「供給要請」は345件で、その99%にあたる343件で対応が完了しました。8月に入ってから新たに寄せられた相談も、潤滑油1件、石油製品2件のみとごく少数で推移しています。

 農林水産業・食品産業では、燃料油やナフサ由来の石油製品などを巡って相談が寄せられ、農水省は園芸農家やパン・菓子等販売店へのプッシュ型調査も強化しました。こうした対策が講じられるなか、相談・供給要請件数は大幅に減少しました。なお、農水省は8月28日に第4回となる「食品容器包装等情報交換会」を予定しており、情報共有や状況把握を続けます。

■検証の結論:国内流通の「目詰まり」は収束局面、ただし中東リスクは継続

 4省庁の最新データを横串で検証すると、医療分野での対応検討中0品目、建設・住宅分野での直近要請ゼロ、農林水産分野での99%対応完了など、政府が示す「目詰まりの収束」という評価は、少なくとも各省庁への相談・供給要請件数の推移からも一定程度裏付けられています。

 ただし、注意が必要なのは「中東リスクそのものが消滅したわけではない」という点です。原油調達データが示す通り、9月分は調達率が約8割にとどまり、既に放出した備蓄分を活用することで前年平月比並みの供給量を確保する見通しであり、タンカーの配船や運航状況によっては到着が後ろ倒しになる不確実性も残されています。

 今回の危機では、原油調達だけでなく、国内流通における特定の製品や資材の「目詰まり」が、医療や運輸、農林水産・食品など幅広い分野に波及することも浮き彫りになりました。政府は今回の経験を踏まえ、単なる緊急対応にとどまらず、原油・ナフサの調達多角化などを盛り込んだ「パワーGX」を推進し、年末までに戦略を取りまとめる方針です。非常時の「目詰まり解消」から、次の供給リスクに強いエネルギー構造をどう築くかへと、政策の焦点は移行しています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)