今回のニュースのポイント
医療・ヘルスケア関連事業を展開するシスメックス、富士フイルムホールディングス、ニコンの決算では、検査・医療機器を中心とする関連事業の売上拡大が目立ちました。シスメックスは国内や欧米市場の伸びを背景に売上高が前年同期比23.6%増となり、通期業績予想を上方修正。富士フイルムHDはヘルスケア部門が12.4%増収、ニコンも同事業が19.9%増収となりました。ただ、利益面では先行投資負担などから各社で差がみられます。成長市場への投資と足元の収益をどう両立するかも焦点となっています。
■ 3社で確認された医療・ヘルスケア関連の伸長
医療・ヘルスケア関連ビジネスを展開する大手企業3社の直近決算では、それぞれの関連事業で売上の伸びが確認されました。
検体検査機器大手であるシスメックスの2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)連結決算は、全社売上高が前年同期比23.6%増の1,306億74百万円となりました。また、複合的な事業展開を行う富士フイルムホールディングス(HD)ではヘルスケアセグメントの売上高が前年同期比12.4%増の2,568億円、ニコンでもヘルスケア事業の売上収益が前年同期比19.9%増の277億9,100万円へ拡大しました。
これら3社は、全社規模や事業構造がそれぞれ異なります。シスメックスの数値は全社ベース、富士フイルムHDとニコンは該当セグメントの業績であり、直接的な数値比較はできませんが、各社が扱う医療・ヘルスケア関連領域で売上が拡大した形です。
■ シスメックスは欧米・国内が牽引、純利益91%増で上方修正
医療・検査機器事業を中核とするシスメックスは、極めて好調な業績を記録しました。第1四半期連結決算(IFRS)は、売上高が前年同期比23.6%増の1,306億74百万円、営業利益が同39.5%増の148億21百万円、親会社の所有者に帰属する四半期利益が同90.9%増の86億91百万円と大幅な増収増益を達成しました。
地域別では、国内売上が前年同期比57.9%増(173億91百万円)と大きく伸長しました。日本電子から取得したシスメックスBioMajestyの事業開始に伴い、生化学検査分野などが拡大したことが要因です。海外市場においても、北米ではヘマトロジー(血球計数)分野の機器・試薬・保守サービスが伸びたほか、欧州でもヘマトロジーや血液凝固検査、尿検査が順調に推移しました。
一方、逆風となったのが中国市場で、血液凝固検査やヘマトロジー機器の販売減少が響き、前年同期比22.5%減(133億88百万円)と苦戦しました。しかし、国内の新事業の貢献や欧米などでの販売増、円安効果などによって中国市場の落ち込みを補い、全社での大幅増益を実現しました。これに伴い同社は、通期の連結業績予想を上方修正し、売上高5,450億円、営業利益600億円、親会社所有者帰属当期利益370億円へとそれぞれ引き上げています。
■ 富士フイルムHDはヘルスケア12%増、利益面では先行投資が影響
富士フイルムHDの第1四半期連結決算は、全社売上高が前年同期比10.3%増の8,264億9,300万円となり、第1四半期として過去最高水準を記録しました。このうちヘルスケアセグメントの売上高は前年同期比12.4%増の2,568億円となり、メディカルシステムなどの好調が全体の売上増を支えました。
一方で、会社全体の営業利益は前年同期比32.0%減の511億8,400万円となりました。ただし、これはヘルスケア市場の需要悪化を意味するものではありません。ヘルスケア分野におけるバイオCDMO(バイオ医薬品開発製造受託)事業で、前期に開設した米国ノースカロライナ拠点の大型製造設備稼働拡大に伴う固定費が増加したことが損益の重しとなりました。加えて、ビジネスイノベーション部門での構造改革費用の計上や原材料価格の高騰などが重なり、全社利益を圧迫した構造です。
■ ニコンもヘルスケア19.9%増、成長事業として存在感
ニコンの第1四半期連結決算(IFRS)は、全社の売上収益が前年同期比3.8%増の1,641億8,200万円となったものの、営業損益は9億9,700万円の赤字(前年同期は11億9,100万円の赤字)となり、営業赤字が継続しました。主力の映像事業が市場減速などの影響から同8.8%減(729億7,000万円)となったことや、全社的な売上総利益率の低下が響きました。
そのなかでヘルスケア事業は、売上収益が前年同期比19.9%増の277億9,100万円と力強い伸びを見せました。損益面でも10億5,300万円のセグメント利益を確保しており、全社業績の黒字化には届かなかったものの、精機事業や産業機器分野と並んで全社売上を支える重要な成長事業としての存在感を高めています。
■ 需要獲得の先に求められる「収益化」のスピード
今回の3社の決算では医療・ヘルスケア関連の売上が伸びた一方、その伸びが会社全体の利益に表れる度合いには違いがみられました。
シスメックスにおいては、中核事業である検査機器・試薬の販売拡大がそのまま全社の大幅増益と通期予想の上方修正に直結しました。一方、富士フイルムHDではヘルスケア売上を伸ばしつつも、バイオCDMOなど将来に向けた大型設備投資に伴う固定費負担が先行して一時的に利益を圧迫する形となりました。また、ニコンではヘルスケア事業自体は増収増益と健闘しているものの、映像事業の減収などをカバーして全社営業損益を黒字化させるまでには至っていません。
需要を売上へ取り込むだけでなく、先行投資や他部門とのバランスを取りながら企業全体の安定した利益へどう結び付けるか。各社の収益化へのアプローチの違いが、今後の決算を見極めるうえでの重要なポイントとなります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













