今回のニュースのポイント
第一生命HD、T&D HD、日本生命グループの2027年3月期第1四半期決算では、資産運用面が各社の収益を支える構図がみられました。第一生命HDは四半期純利益が前年同期の約4.7倍、T&D HDも最終増益となる一方、日本生命グループは基礎利益が24.7%増の2,608億円となったものの、四半期純剰余は13.9%減の914億円となりました。今後は運用環境に加え、新契約や保険本業から持続的に利益を生み出す「稼ぐ力」が焦点となります。
■ 生保3社、資産運用面が収益に大きく影響
国内生命保険大手の第一生命ホールディングス(HD)、T&Dホールディングス(HD)、日本生命保険(日本生命グループ)の2027年3月期第1四半期連結決算(2026年4〜6月)が出そろいました。各社の決算資料から共通して浮かび上がるのは、金利や市場環境の変化を背景に、資産運用面が各社の収益に大きく影響している構図です。
しかし、その決算結果を一概に「大手そろって好調」と括ることはできません。最終利益にあたる指標の増減だけを見ても、第一生命HDが大幅な増益を記録した一方で、日本生命グループは本業の基礎的な収益を示す「基礎利益」が増加しながらも「四半期純剰余(最終利益相当)」は前年同期を下回るなど、各社の利益構造によって異なる表れ方を示しています。
■ 第一生命は最終利益4.7倍、運用収益の拡大が大きく寄与
第一生命HDの第1四半期決算は、経常収益が前年同期比25.3%増の2兆8,930億円、経常利益が同195.6%増の2,510億円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同367.8%増(前年同期の約4.7倍)の1,600億円となり、大幅な増益で着地しました。
この大幅増益を主導したのは資産運用面です。保険料等収入も同10.9%増の1兆7,607億円と伸びたものの、主力の第一生命保険における有価証券売却益の増加や資産運用収益が同68.3%増の1兆13億円へと急拡大したことが全体の利益水準を押し上げました。資産運用収益の大幅な伸びが、最終利益を押し上げる重要な要因となりました。
■ T&Dは保険料減少を資産運用収益の伸びでカバー
T&D HDの第1四半期決算も増益を確保しました。経常収益が前年同期比1.4%増の9,043億4,100万円、経常利益が同29.9%増の762億6,000万円、親会社株主に帰属する四半期利益が同13.3%増の422億9,600万円となっています。
同社の場合、保険料等収入は6,465億7,900万円と前年同期比9.9%減少しました。しかし、これを大きく補ったのが前年同期比52.7%増の2,304億9,600万円に達した資産運用収益です。利息及び配当金等収入(1,003億2,100万円)の堅調な推移に加え、有価証券売却益の増加(710億6,700万円)や為替差益の計上(123億7,700万円)が寄与し、保険料収入の減少分を補って利益を押し上げる構図となりました。
■ 日本生命は基礎利益24.7%増、一方で最終利益は減益
最も対照的な数値を示したのが相互会社形態をとる日本生命グループです。グループ全体の基礎利益は前年同期比24.7%増の2,608億円へと拡大しました。日本生命単体で見ても基礎利益は2,114億円(同28.8%増)に達し、利息及び配当金等収入の増加に伴う利差益の増加(+358億円)や標準責任準備金積増負担の減少等による保険関係損益の改善(+114億円)が寄与しています。
ところが、四半期純剰余は前年同期比13.9%減の914億円となりました。本業の基礎的な稼ぐ力を示す指標が大きく改善しているにもかかわらず、最終的な剰余金が前年同期を下回るという一見すると複雑な決算となっています。
■ なぜ「基礎利益」と「最終利益」が異なる方向を向くのか
日本生命の決算に現れた「基礎利益の増加」と「最終利益の減少」は、生命保険会社特有の会計構造に起因しています。
日本生命単体では、基礎利益が増加する一方、キャピタル損益は前年同期のマイナス538億円からマイナス1,540億円へ悪化しました。資産運用収益は前年同期比572億円増加したものの、有価証券評価損の増加(8億円から600億円へ増)などにより資産運用費用も529億円増加したことで、資産運用収支自体の増加幅は43億円にとどまりました。基礎利益の改善がそのまま最終段階の利益増加につながる構造ではなかったことが分かります。生保決算においては、最終損益の増減だけを見て企業の経営実態を評価することの難しさが表れています。
■ 3社に共通する金利環境の変化と課題
金融市場環境の変化は、生保各社にとって保有資産から得られる利息・配当収入を拡大させる要因となっています。
今回の3社の決算でも、第一生命やT&Dで利息・配当収入や運用売却益が増加し、日本生命でも利差益が拡大するなど、資産運用面が利益を下支えする構図が共通してみられました。ただし、金利の変動は同時に債券の含み損益やヘッジコストの増減をもたらすため、各社の資産・負債管理(ALM)の巧拙が問われることになります。
■ 運用益にとどまらない本業の将来利益の創出
生保各社の持続的な成長を見るうえでは、足元の運用環境による損益だけでなく、将来の利益源泉となる「新契約の獲得状況」や「保険本業の収益」を確認することも欠かせません。
この観点において注目されるのが日本生命グループの動向です。同グループの第1四半期における新契約価値は前年同期比58.4%増の1,213億円となりました。一時払終身保険や団体年金保険の販売増加などが寄与しており、足元の運用損益だけでなく、新契約から生み出す価値にも改善がみられます。
■ 焦点は運用益から「持続的に稼ぐ力」へ
大手生保3社の第1四半期決算では、資産運用面が利益を下支えする姿が共通して確認されました。その一方で、第一生命の大幅な最終増益、T&Dの保険料等収入の減少を資産運用収益の伸びが補う構図、日本生命の基礎利益増加と最終減益という結果が示す通り、その効果が表れるプロセスや企業ごとの強みは一様ではありません。
環境変化に伴う運用益の拡大にとどまらず、新しい保障性商品の開発や新契約の獲得、保険本業からの安定的な利益創出をどれだけ積み上げられるか。今後の生保各社の決算においては、単なる最終利益の増減以上に、その利益を構成する「本業の稼ぐ力」の中身を見極めることが重要となりそうです。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













