20m先の人の中から指定した人の声のみを収音

2014年04月18日 21:49

 NTT<9432>は16日、カメラでズームして撮影するように、約20mの離れた場所で話す人々の声から、指定した人の声のみをクリアに収音可能な「ズームアップマイク」を開発したと発表した。この技術を活用することで、スポーツ観戦や中継において、まるでカメラでズームするかのように、遠く離れた選手の声を自由に選んで聞くことが可能となるという。

 これまで、遠くの音を収音する技術には、ガンマイクやパラボラマイクなどがあった。しかし、音源が5m以上離れた位置にある場合、受音時のエネルギーが小さいことや空間分解能が低いため、周りの雑音と区別して収音することが困難だった。「ズームアップマイク」は、約100本のマイクロホンと、凹型反射板で構成。音を反射させて遠くの音を収音可能とする凹型反射板の前に、約100本のマイクロホンを設置することで、そのマイクロホン間に生じる位相/振幅差を利用し、約20mの狙った音だけをクリアに収音することが可能だ。

 また、約100本のマイクロホンから、すべての音声を録音しておくことで、あとから任意の場所の音をズームアップして聞くことも可能。利用シーンとしては、例えば、望遠カメラを組み合わせることで、スポーツ選手に映像も音声もズームアップし、より臨場感のあるスポーツ観戦や放送サービスが可能となる。さらに、大きな会場の客席からの質疑応答も、手元にマイクなしでクリアに聞くことが可能となるほか、大人数のテレビ会議でも一人一人の発言をクリアに聞くことができるようになる。

 NTTでは、まず、スポーツ中継における収音方法の一つとして、スタジアムへの設置を目指す。2年後を目安として、50m(サッカーコートの長辺の半分)先にある音源をクリアに収音できるように、技術レベルの向上を目指す。
 
 また、小型で汎用性のあるマイク素子(2~3本)と組み合わせることで、騒音や雑音のある環境下でも、クリアに狙った場所の音声を収音できる小型収音装置(マイク)やソリューションを、NTTグループの事業会社を通じて、開発・販売する。雑音の多い車でのカーナビ操作や、工場内での機械騒音下でのハンズフリー会話などへの活用が期待できるとしている。(編集担当:慶尾六郎)