三菱商事がトルコ財閥に出資、中央アジア戦略を強化

2015年06月10日 08:33

 三菱商事<8058>は6月4日、トルコのチャルックホールディング(CH)傘下の総合エネルギー・インフラ事業会社チャルックエナジー(CE)に出資し、同社と戦略的パートナーシップを構築する事に合意したと発表した。まず100億円超を出資し、将来さらに出資額を引き上げることも検討している。

 1981年に設立されたCHは、従業員数約2万4000人、売上高27億4700万ドル(2014年度)のトルコ有数の財閥。傘下のCEは、豊富な地下資源と人口増加を背景に成長するトルコ周辺国でのエネルギー関連プラント建設を手がけている。プラント建設では、エンジニアリングの設計、資機材調達、製作、建設工事など一連の工程を請け負う「EPC(Engineering Procurement Construction)」などで成長してきた。

 さらに同社は、トルコとその周辺国での配電・配ガスなどのユーティリティ事業、発電事業にも取り組んでいる。

 三菱商事とCHは、90年代からトルクメニスタンやウズベキスタンなど中央アジア諸国におけるプラント建設などで協力してきた。三菱商事は、今回の提携により、CEとともに発電事業、天然ガス・石油向けプラントの建設を共同で推進する。

 旧ソ連圏の中央アジアは資源が豊富で、各国が積極的に資源開発に乗り出している。特に、中国と欧州を陸路で結ぶ経済圏「シルクロード経済ベルト」構想を推進する中国政府は、中央アジア外交を強化している。

 こうした中で、わが国が中央アジア諸国の資源開発を強化することが期待されている。『日本経済新聞』(4月8日)の報道によると、安倍晋三首相は9月をメドに、カザフスタン、ウズベキスタンなど中央アジア諸国を訪れる検討に入っており、同地域で影響力を強める中国をけん制する狙いがある。

 三菱商事は、こうした日本政府の方針に沿う形で、チャルックの人脈などを生かし、中央アジア諸国での事業に積極的に参入すると予想される。(編集担当:久保田雄城)